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2007年3月の記事

2007年3月31日 (土)

テレビ番組ネット転送サービスに対する仮処分認容

 昨日、東京地裁で、録画したテレビ番組をインターネットで転送するサービス著作権法違反だとしてNHKなどの放送局がサービスの差し止めを求めた仮処分申立事件で、放送局側の申し立てを認める決定をしたとのこと。相手方は「日本デジタル家電」という静岡県浜松市の会社。専用機器を海外などに住む利用者に有料で貸し出し、テレビ番組を録画して転送するものらしい。

 利用者が自分のために録画することは著作権侵害にあたらないのですが、報道によれば、この件でテレビ番組を複製しているのは利用者ではなく事業者であると判断したようです。

 同じようなサービスをしていた「録画ネット」事件(平成16.10.7決定、判時1895号120頁)では放送局側の申立が認められたのに対し、別の「まねきTV」に対する仮処分事件は、昨年、東京地裁(平成18.8.4決定、判例時報1945号95頁)、東京高裁(平成18.12.22決定)とも、著作権侵害(送信可能化権の侵害)にあたらないとして、仮処分を認めませんでした。ただし、この件については、仮処分を認められなかった放送局側が、近々、本案訴訟(つまり訴訟)を提起するとの報道がなされています。

 これらの事案は、業者によってそれぞれ少しずつサービス業者側の事業形態が異なりますので、その違いを見ずに単純に勝ち負けだけを並べても無意味です。今回の「日本デジタル家電」の業務内容は報道内容を見ても細かい点は不明です。したがって、なぜ、「まねきTV」事件と違う結論になったかというところは、報道内容だけを見ても現時点では残念ながらよくわかりません。

 そのあたりの内容が公表された際に検討することとしましょう。

下請代金の不当減額~下請法

 下請法(したうけほう)とよばれている法律があります。正式には「下請代金支払遅延等防止法」

 この法律は、独占禁止法の特別法で、公正取引委員会の所管になります。つまり、先日紹介した景品表示法と同じですね。公取委のホームページにこの法律の概要のパンフレットがありますので、詳細はこちらをご覧ください。

 →  http://www.jftc.go.jp/sitaukepamph.pdf

 独占禁止法で禁止されている「不公正な取引方法」の指定行為の中に、「優越的地位の濫用」というのがありますが、この優越的地位の濫用の行為形態のうち、特に下請事業者に対しての親事業者からの不当な代金支払い遅延などの不当な行為を規制して、弱い立場にある下請事業者を保護するために、特に定められた法律です。

 この法律は、親事業者に対して、発注書面の交付義務を課したり、下請代金減額、支払い遅延、不当返品の禁止などが規定されています。親事業者からの不当な圧力に困っている下請事業者の方は、一度、公正取引委員会に相談してみられればいかがでしょうか。

 この法律の対象となる下請取引は、商品の製造や修理の下請運送などのサービスの下請だけでなく、ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど(情報成果物)の作成作業を委託するような場合も含まれます。(なお、建設工事の下請は、建設業法の適用となります。)

 3月下旬に、公正取引委員会は、食品事業者(ジャパンファーム)と運送事業者(バンテック首都圏ロジ)の2社に対して、それぞれ下請法4条1項3号(下請代金の減額の禁止)に違反する事実が認められたとして、同法7条2項に基づいて、勧告を行いました。

 どちらの事案も、下請事業者に対して、下請代金の額からこれに一定率を乗じて得た額や一定額を差し引くことにより、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請代金を減額していた(減額金額は、前者が下請事業者6名に対し総額1592万7557円、後者が下請事業者21名に対し、総額3107万5791円。)というもの。

 勧告の内容は、両事件とも同様で、その概要は、減額行為が下請法に違反するものである旨及び今後同様の行為を行わない旨を取締役会の決議により確認すること、同様の行為がないよう社内体制の整備のために必要な措置を講じ、その内容等を自社内に周知徹底すること、勧告に基づいて採った措置を取引先下請事業者に周知すること、などとなっています。なお、両事件とも、勧告前に不当減額分は下請事業者に支払われています。 

2007年3月29日 (木)

続:著作権侵害不存在確認

 先日、「銀河鉄道999」のセリフにまつわる槇原氏と松本氏の裁判のニュースについて触れましたが、どうやら第1回口頭弁論期日が開かれたようですね。スポーツ紙の記事を見てると訳がわからない部分も多く、壇弁護士(このブログ左下にリンクしてます)も「証拠提出を求める訴えなど存在しないし、証拠が示されなかった場合に損害賠償を認めるような訴えもない。証拠は、訴訟で請求する物ではなく、訴訟の帰趨を決する資料に過ぎない・・」とツッコミを入れておられます。このツッコミはもちろん法律的に正しいと思います。

 が、不存在確認請求訴訟のことを、「相手に証拠を出させることを求める裁判」と表現するのは、訴訟法を知っている法律家では絶対に出てこない新鮮な切り口だと何だか感心もするのです。

 前にもちょっと書きましたが、今回の報道内容を前提にすれば、おそらくは、槇原氏が松本氏に対して、「著作権侵害不存在確認」「(名誉毀損、業務妨害等による)損害賠償」を請求する裁判を提起したという推測が当たってそうですね。

 蛇足ながら、ついでに推測しておくと、2200万円という請求額は、2000万円が損害の本体(慰謝料でしょうか)で、その10%の200万円を弁護士費用相当損害金として加算しているのではないかと想像されます。

ヤフーBB個人情報漏洩事件第一審判決

 インターネット接続総合サービス「Yahoo!BB」の会員が原告となって、ヤフーBBテクノロジー(旧:ソフトバンクBB)の両社を被告として顧客情報の漏洩について損害賠償を求めた訴訟についての大阪地裁判決(平成18.5.19)の記事が、判例時報(1948号122頁)判例タイムズ(1230号227頁)に出そろったので、ご紹介。

 前に譲渡担保関係の最高裁判決の紹介コメントが、判例時報判例タイムズ両誌とも同一であったことを書きましたが、今回はそれぞれ別のコメントでした。若干、判例タイムズのほうが詳しいですね。しかし、判例タイムズのこの判例紹介のタイトルが、また長い。

「インターネット接続等の総合電気通信サービスの顧客情報として保有管理されていた原告らの氏名・住所等の個人情報が外部に漏えいしたことにつき、同サービスを提供していた被告に、外部からの不正アクセスを防止するための相当な措置を講ずべき注意義務を行った過失があり、それによって原告らのプライバシーの権利が侵害されたとして、原告らの不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容した事例」

 原告らは、被告両社に対して、1人につき10万円の支払(連帯債務)を求めていましたが、大阪地裁の判決は、被告BBテクノロジー(旧:ソフトバンクBB)にだけ、1人につき6000円(慰謝料5000円、弁護士費用1000円)の支払を命じました。

 先日、ご紹介したように、これについては原告および被告BBテクノロジーがそれぞれ控訴しており、大阪高裁での審理は先日(3月20日)結審して、控訴審判決が5月31日の予定となっています。(【追記】判決はその後、延期され、6月21日になりました。)

 なお、判例タイムズ(1229号105頁)に、ウイニー(Winny)開発者の刑事事件(著作権法違反幇助事件)の京都地裁判決(平成18年12月13日)が紹介されてます。ゆっくりと読んでみようと思います。

【追記】
 控訴審判決については、
6月21日付「ヤフーBB個人情報漏洩事件控訴審判決(大阪高裁)」
http://stuvwxyz.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_0d7e.html

などを参照下さい。

2007年3月28日 (水)

新生銀行、景表法に基づく排除命令

 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)に基づく排除命令が、新生銀行の金融商品の広告チラシの表示について出されています(詳細は公正取引委員会のホームページ → http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.march/07032803.pdf )。

 同行の定期預金「パワード定期プラス」について、一般消費者向けチラシには3・19%という最も高い金利だけが適用されるかのような表示が記載されていたというものです。

 この不当表示に対して、公取委排除措置命令を出し、(1)この表示は,実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものである旨を公示すること、(2)再発防止策を講じて,これを役員及び従業員に周知徹底させること、(3)今後,同様の表示を行わないことを命じました。

 なお、これに先立ち、先日、金融庁長官は、「金融機関が顧客に誤認されるような広告を行って、公正取引委員会から排除命令を受ける事態になれば誠に遺憾」と指摘した上で「そうした場合、当局としては顧客保護や利用者利便の観点から適切な監督上の措置を取る」と話していますので、今後金融庁がどのように対応するか注目されます。

 なお、景品表示法は、独占禁止法の特別法です。このことは景品表示法第1条を見ていただければ明らかなのですが、独占禁止法で禁止されている「不公正な取引方法」のうち、一般消費者向けの不当景品、不当表示を規制するために作られています。

 金融、保険、証券分野の各種の商品の内容やリスクは、一般消費者にわかりにくいだけに、特にこのような表示については事業者としては十分に配慮しなければなりませんし、それができていないケースについては、今回のように積極的に規制をしてほしいと思います。景品表示法は一般消費者向け表示についての規制ですが、事業者である中小企業にとっても、このような商品については全くの素人であり、融資話をエサに金融商品等を契約させることは許されません。

 公取委から独占禁止法違反(優越的地位の濫用)とされた三井住友銀行の金利スワップ事件などは、単にメインバンクによる中小企業に対する優越的地位の濫用というだけの問題にとどまらず、弱い事業者に対する不当な表示の問題でもあります。

刑事判決の主文後回し

 インターネットの自殺サイトを悪用して3人を殺害したとされ、殺人や死体遺棄などの罪で死刑を求刑された被告人(前に書いたように、記事では「被告」となっています)の判決が大阪地裁で現在言い渡し中のようです。報道によれば、裁判長は主文の言い渡しを後回しにして、事実認定と判決理由を朗読しているとのこと。記事では「厳しい刑が予想される」としています。

 刑事事件では、裁判官は通常、判決の言い渡しの冒頭で主文を読み上げます。判決の主文には、有罪であれば、その被告人に対する刑(懲役や罰金)の内容が書かれています。これを最初に読むというのは、判決書きの記載順序からいえば自然です。

 しかし、死刑を結論とする判決の場合は、裁判所の慣行として、主文は最後に読まれています。これも、別に法律などで決まっているわけではなく、死刑以外の一般の判決と同じく、最初に「被告人を死刑に処する。」と言っても法律上はかまわないのです。最初に「死刑」と言った場合の被告人の動揺を考えての慣行なのでしょうが、ここまで慣行化してしまうと、それを承知している被告人にとっては同じようなものかもしれません。もっとも、主文が後回しになったからといって絶対に死刑だという理屈ではないので、被告人としては一縷の望みにすがれるのかもしれませんが、でももし、主文を後回しにしたのに、結果が死刑ではないなどとなった場合、現状では、逆に問題でしょうね。 

(後記)この原稿を書いているうちに、死刑の言い渡しまで終わったようです。

2007年3月26日 (月)

消滅時効期間の起算点(時効談義:その7)

 前回、消滅時効の期間について書きましたが、この期間がいつから始まるか(起算点)、が問題になります。

 民法166条1項は、「権利を行使することができる時から進行する」としています。これが原則です。

 例えば、100万円を去年の1月1日に借りたとして、その返済期日が今年の1月1日と決められていたとします。そうすると貸し主(債権者)が「返せ」と請求できるのは今年の1月1日からですから、この返済期日から時効期間が進行します。貸した日からではありません。ただし、期限の定めなしに貸した場合には、貸した時から進行するとされています。

 前回も少し触れましたが、不法行為の場合は民法724条を見ておく必要があります。不法行為に基づく損害賠償というのは、交通事故被害や盗難、詐欺、傷害、名誉毀損事件など広くいろいろな被害弁償の請求の場合に関係してきます。

 724条は、まず3年間の短期消滅時効を定め、それが進行するのは被害者などが「損害及び加害者を知ったときから」となっています。したがって、その不法行為があった時からとはなっていません。その不法行為の時に「損害及び加害者」がわかるケースであれば同じ事ですが、被害にはあったが、誰がやったかわからないなどの場合は加害者がわかるまでは時効は進行しませんので、3年以上前の古い事件でも損害賠償を請求することができるわけです。

 なお、724条の後段には、「不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする」と規定されています。この20年間の期間については、通常の「時効」ではなく、「除斥期間」であるとされています。時効との違いはここでは触れませんが、いずれにせよ、不法行為があった時点から20年が経過すれば、たとえ、加害者が判明してから3年以内であっても、この除斥期間の制限にひっかかってしまうということになります。

2007年3月23日 (金)

著作権侵害不存在確認

 おふくろさん問題と同じく、著作権の関係で、槙原敬之氏が漫画家松本零士氏に対し、裁判を起こしたと報じられています。以下、推測を交えた内容ですので、間違ってたらごめんなさい。

 スポーツ紙の記事から見れば、「盗作の証拠提出を求める訴え」を起こしたとなっていますが、記事の他の部分の内容から考えて、槇原氏側は、「著作権侵害不存在確認等請求」を起こし、その裁判で松本氏側が著作権侵害だとあくまでも争うならば、どこが著作権侵害なのか主張し立証せよ、という形になっているものと推察されます。このような訴訟の場合、著作権の侵害行為については、それがあったという側(つまり、本件では被告の松本氏側)が立証責任を負うことになっています。まぁ、そのことをひっくるめて、スポーツ紙は「盗作の証拠提出を求める訴え」と表現しているのではないでしょうか。

 また、記事によれば、「証拠がない場合には、2200万円の損害賠償も求めている」とされているのですが、これもちょっとそのままは理解しにくい。これも想像を含めていえば、2つの場合が考えられのかなと思ってます。

 1つは、上に書いた著作権侵害不存在確認請求と一緒に、損害賠償請求を引っ付けている。つまり、松本氏側が槇原氏の作品は著作権侵害だと言った行為は、虚偽の事実を言いふらして槇原氏の名誉などを傷つけたり、仕事に影響を与えたりした、ということで、違法に損害を与えた、つまり不法行為(民法709条)に該当するので、損害賠償請求も行っているような場合。

 もう1つは、今の所、著作権侵害不存在確認請求だけの裁判だが、松本氏側が著作権侵害について立証できないような場合には、損害賠償請求を追加しようと準備している場合。(でも、2200万円ってはっきりと金額出てるものなぁ。やっぱり前者かな。)

 〈この事案の要旨〉

 昨年、松本氏が、槙原氏の作ったの歌詞の一部が「銀河鉄道999」のセリフを無断使用しているとした問題。槇原氏の歌詞は「夢は時間を裏切らない。時間も夢を決して裏切らない。」。松本氏の「銀河鉄道999」の「時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない。」のセリフの盗作だとマスコミに主張。

消滅時効期間(時効談義:その6)

 やっと消滅時効

 これは、債権などが行使されないまま一定期間が経過するとその債権が消滅してしまうという制度です。民法では、166条~174条の2までに規定がなされています。

 民法167条で、債権の消滅時効は10年と規定されていて(債権以外は20年)、これが原則ですが、民法やその他の法律で債権の種類によって、短期の時効期間が定められていることも多く、民法の時効の所だけを見ていては間違えますので、注意しなければなりません。

 例えば、商品の代価については173条1号に該当して時効期間は2年飲食店での食事代174条4号に該当して時効期間は1年となっています。また、商行為によって生じた債権(詳しい説明は省きます)については、商法上の商事時効として原則5年が時効期間です(商法522条)。この商事時効に該当する場合でも、法律でもっと短い時効期間が定められておれば短いほうが適用されます。

 また、民法に規定されている不法行為709条~)に基づく損害賠償請求権の時効は3年です(724条始期に注意。同条後段の20年は除斥期間。)。

なお、これらの短期消滅時効期間にあたる場合でも、裁判で請求され、その請求を認める判決が確定したような場合には、10年の時効となります(民法174条1項)。裁判上の和解など確定判決と同じ効力を有するものについても同様です。

2007年3月21日 (水)

名古屋市営地下鉄に関する課徴金減免制度適用企業

 このブログの3月14日の記事で、独占禁止法違反事件についての課徴金減免制度の適用事業者の公表状況を紹介いたしましたが、昨日、公正取引委員会から追加公表がなされています。

 http://www.jftc.go.jp/genmen/kouhyou.html

 名古屋市営地下鉄に係る土木工事の入札談合事件について、対象企業は株式会社間組(ハザマ)です。

 なお、同じく昨日、同社のホームページに、この件についてのプレスリリース「独占禁止法違反の排除とコンプライアンス経営について」が発表されています。

2007年3月20日 (火)

ヤフー個人情報漏洩事件控訴審が結審

 大阪高等裁判所で、ヤフーBB個人情報が流出した事件の控訴審が続いていましたが、本日午前、審理が終結しました。判決言い渡し期日は、5月31日午後1時15分。

 なお、一審判決は平成18年5月19日でした。

 この記事、夕方にアップするつもりでしたが、今見たら、先に壇弁護士がブログにアップしたようなんで.....

最高裁判所の弁論と判決

 今朝の日経を読んでると、法律や裁判関係の記事が満載ですね。裁判員制度やら、名古屋の地下鉄談合の起訴やら、野球選手のひき逃げ事件初公判、佐賀の殺人事件の無罪判決やら。それに、和歌山の談合防止制度の話も興味を引きますが、これは関西版だけかな。

 さて、今日は2つの記事に注目しました。「NOVA敗訴の2審が確定へ・中途解約金返還訴訟」「東芝・NECの勝訴判決変更へ・談合訴訟の上告審」です。

 中途解約に関する消費者訴訟独禁法違反についての公取審決の不服の裁判ということで、中身的にも、私にとって関心の深い事件なのですが、ここでは中身についてのコメントは無しです。

 両事件とも、報道の内容は、それぞれ最高裁の判決の言い渡し日が決まった(東芝・NEC事件は弁論期日も決まった)というもの。したがって、判決の結果は、その判決日でないとわからないはずなのに、NOVAの事件は同社敗訴の2審判決が確定へ、となっていて、東芝・NECの事件は両社の勝訴判決変更へ、となっています。つまり、判決日が決まっただけなのに、判決結果の見通しが報道されているわけです。

 最高裁の上告審での審理というのは、通常は、それまでの記録を基にした審理であり、弁論期日は開かれないことが多く、通常はそのまま上告棄却(元の判決内容を容認)されることが多い。ところが、最高裁が、審理の結果、元の判決内容を変更しようと思うときには、弁論期日が開かれるのです。したがって、弁論期日の指定がなく、判決言い渡し期日のみが決められたNOVAの事件は原判決が維持されるであろうし、東芝・NECの事件は弁論期日判決言い渡し期日の両方が指定されたので原判決が変更されるだろう、という見通しになるわけです。

 もちろん、理屈上は、この弁論期日での双方の新たな主張などを踏まえて判決がなされるのであって、弁論期日前に結果が決まるというのはおかしいのです。が、実際上、この段階での弁論で突然の逆転ホームランはほとんど考えられにくいですからね。もちろん上告した後、上告人側から上告の理由書が提出され、それを最高裁側も読んだうえでのことです。

 そういうような事情で、高裁の判決に不服で上告したからといって、通常は、弁論期日が開かれませんので、最高裁判所まで出かけることはあまりありません。上記のように、逆転判決になる予定の場合だけ、弁論期日が開かれ、それに出て行くことになりますので、弁護士を長くやっていても現実に最高裁で弁論する機会はほとんどないというのが実際です。

2007年3月19日 (月)

書面のタイトル(契約書・合意書・協定書・示談書・・・・)

 このブログのタイトルは「覚え書き」で、自分のメモ的な意味を含めてつけていますが、契約書のような書面のタイトルにも、覚書という言葉が使われます。

 法律相談などで、相手との約束を書面にするときに、書面のタイトルはどうするか、と聞かれることがよくあります。「契約書」「合意書」「協定書」「協議書」「示談書」「和解書」などいろいろ思い浮かぶからでしょう。場合によっては、「念書」とか「借用書」などというのもありますね。「金銭消費貸借契約書」とか「不動産売買契約書」と書くと、いかにも正式っぽい感じです。それに、こっちのほうが、タイトルを見ただけで、中身が何について書かれているかわかりやすいという利点もあります。

 このタイトルの付け方には厳密な決まりがあるわけではなく、上のようなタイトルの違いによって中身の効力に影響がある場合はほとんどないと思います。極端に言えば、タイトルがなくったって、中身がきちんとしていれば効力的な問題はありません。ただ、後の管理上の問題もあるので、何かつけておいたほうがいいことは言うまでもありませんが。

 上に挙げた名称でいえば、お互いの合意内容を書く書面であれば、「合意書」というのが広く使いやすいかもしれません。わかりやすくするならば、例えば、「土地使用についての合意書」とか、「借金返済に関する合意書」とかにしておけばいいでしょう。もちろん、これを「契約書」に置き換えても一緒です。

 何か争いがあって相互に譲歩し合って話をまとめたのであれば「和解書」とか「示談書」というのもよく使います。「協定書」という言葉は何だか大層な感じがして、普通の個人間の事案では私は使いませんが、法的に特に違いはないと思います。逆に、「覚書」というのは「契約書」のような正式な感じを出したくないときに私は使います。でも、これも、法的に違いはありません。

 「念書」というと、私の感覚では当事者の片方が書いて相手に差し入れる感じでしょうか。その意味では「差入書」という言葉もありますね。でも、双方で作成する場合にも「念書」が使われています。

 いずれにしても、タイトルをこうしないといけないという法律が一般的にあるわけではありません。重要なのは、タイトルではなく、書面の中身・内容ということになりますね。

2007年3月17日 (土)

刑事と民事の時効(時効談義:その5)

 今回は、消滅時効の話になる予定だったのですが、昨日から風邪気味のこともあり、ちょっと寄り道。

 刑事事件の時効のところで、例として、殺人罪は25年、詐欺罪・窃盗罪は7年が公訴時効であると説明しました。これに関して質問があり、誤解があってはいけないので、刑事事件と民事事件の時効の関係を補足しておきます。

 上に書いた「公訴時効」というのは、前にも説明したように、犯罪をしてから一定期間たつと刑事事件として起訴できないという制度です。したがって、被害者(又は遺族)が殺人や詐欺や窃盗などの損害賠償を犯人に対して請求したり、盗品を返せと請求することについての時効ではありません。こちらのほうは、民事法上の請求権(債権)の問題であり、これがいつまで請求できるか、というのは、民事の時効として検討する必要があります。

 この場合に検討すべき民事の時効制度が、次に書く予定の「消滅時効」の制度ですので、刑事上の「公訴時効」とは直接の関係はありません。

2007年3月16日 (金)

ライブドア事件判決の記事用語

 「東京地裁の小坂裁判長は、堀江被告懲役2年6カ月(求刑同4年)の実刑判決を言い渡した。」というような報道がされてます。この事件についての論評はマスコミからブログまで既にあちこちで飛び交ってて、私が口をはさむところではありませんが、せっかくの機会なので、上のような判決記事の用語について、コメントを。

 ☆「裁判長」
 合議体(地裁・高裁では通常3名)の裁判官の中で、代表して訴訟指揮などを行う裁判官。ただし1人の裁判官で裁判を行う場合でも、その裁判官を裁判長という場合もある。本事件は3名の合議体である。

 ☆「被告」
 本来、刑事訴訟法上は「被告人」が正解。民事事件では、「原告・被告」でよいが、法文からいえば刑事事件で「被告」は間違いである。大学時代に先生から、新聞が字数を減らすために「被告」を使っていると聞いたことがあるが、真否は知らない。ときどき、裁判所から訴状を送られた依頼者が訴状を見て、「『被告』にされた!!」といってカンカンに怒っているケースがある。どうやら、その怒りの多くは、(相手方から)「犯罪者扱いされた」という感覚に起因するもののようだ。つまり、マスコミの用語法のため、一般的には、○○被告というと、犯罪者(刑事事件の被告人)という印象を与える結果となってしまっている。

 ☆「懲役」
 刑法に定められているの一種。「刑務所に入ること=懲役」と思っている人も多いが、懲役という刑は、刑務所に入れて、働かせる(「所定の作業を行わせる」)という刑である。働く必要のないのが、「禁固(禁錮)」という別のである。

 ☆「求刑」
 刑事裁判の審理の最後のところで、検察官が刑の種類・量について述べる意見のこと。刑事訴訟法に規定があるわけではなく、慣行上行われている。したがって、判決を法的に拘束するものでは全くなく、裁判官が求刑を上回る刑を言い渡しても違法ではない。

 ☆「実刑(判決)」
 一般的には、懲役や禁固といった刑罰(自由刑)に処する有罪判決で、執行猶予がつかない場合をいう。これも、法律に記載された言葉ではない。

2007年3月14日 (水)

民事の時効-取得時効(時効談義:その4)

 民事の時効(取得時効消滅時効)のうち、今回は取得時効を取り上げます。

 簡単にいうと、物を、自分の物として占有していて一定期間継続すると、所有権を取得できるという制度です。まず、民法162条1項で、20年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然に他人の物を占有すると所有権を取得すると規定され、同条2項では、(1項の場合に加え)占有開始時点に、善意・無過失である場合には時効期間が10年とされます。対象は、動産不動産に限りませんが、動産の場合は、192条の「善意取得(即時取得)」という別制度もあるので注意してください。

 所有権以外の財産権(賃借権など)の取得時効も同様の規定です(163条参照)。

 ところで、上の10年の時効になる場合の「善意」ですが、時効に限らず法律用語として出てくる場合は、日常の意味と異なります。普通、日常的に使う「善意」というのは、「良い事をしようと思う意志」とか「誠実な気持ち」だとかの意味ですね。しかし、法律で出てくる場合は、「善意」というのは、ある事実を「知らない」という場合を指します。したがって、反対語である「悪意」は、日常用語で使われる「相手に悪さをしようとする気持ち」などというのとは違い、法律用語としてはある事実を「知っている」場合に使われます。つまり、ここでは、それを知っていたり、知らなかったりすることが「良い事」か「悪い事」かという社会的・道徳的・倫理的な評価とは無関係です(ただし、若干意味の異なる場合もあることに注意・・例えば、法定離婚原因の「悪意の遺棄」)。

 したがって、この(10年の短期時効の)条文で「善意」という意味は、ある物が自分の物であると信じていること(自分の物であると思っていること)です。「善意・無過失」となると、自分の物と信じており、しかも、そう信じたことについて過失がない、という意味になります(過失とは何だ、というのは、ここでは省略。)。

 よく他人の土地でも勝手に使っていたら自分の物になるというように取得時効の制度が理解されることがありますが、「所有の意思」が外形的に出なければならないのが原則なので、人から借りて長年占有しているだけでは取得時効は成立しません。

 実際の裁判などで取得時効が争われるケースとしては、例えば、「相当以前にもともと売買によって取得したはずなのだが、登記も移しておらず、売買契約もなく、当時の所有者も死亡して子供の代になっている」というような場合です。この場合、売買契約の効力に基づいて登記の移転を請求するのが本来だが、昔の契約書などは何も残っておらず証明できない、けれど昔から自分(や先代)が使っているのは明らかだから、時効取得を主張して登記を移す請求をするという組み立てができます。

 また、「元の契約が、何らかの理由で無効だったことが何年もたってわかって返還を請求された」という場合、既に引渡を受けて使っている(占有する)者が、契約は無効だとしても既に時効取得している、という形で反論主張するケースもあります。

 その他、本来の土地の境界と違う線を境として使用されている場合、その越境部分について時効取得の主張がなされるというケースもあります。

課徴金減免制度申告企業の公表

 改正独占禁止法で新設された、自主申告に基づく課徴金減免制度(リニエンシー)に関連して、企業名公表を申し出た企業が、公正取引委員会のホームページで公表されている。

 水門設備工事の談合事件と路トンネル換気設備工事の談合事件の関係である。

 減免状況と企業名の具体的な内容は、公取ホームページから http://www.jftc.go.jp/genmen/kouhyou.html

2007年3月13日 (火)

時効談義:番外編

 当事務所に届いた判例時報1954号(3月11日号)39ページ~に掲載された消滅時効の時効中断に関する最高裁第3小法廷判決(H18.11.14、破棄自判)に関連しての雑感・つぶやきです。

 この判決の内容自体は私の今の仕事とも関係は深く興味を引くものなので目に止まったのですが、それは置いといて。

 判例時報で、この判決の見出しとして冒頭につけられているのが、

『物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に保証人が代位弁済をした上で差押債権者の承継を執行裁判所に申し出たが承継の申出について民法155条所定の通知がなされなかった場合における保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効の中断の有無』

 なんだかすごい文章ですね。法律専門家が読めばこの百何文字かから、結構、事案・内容がわかる反面、専門外の人にとっては悪文そのものかもしれません。なんだかよくわからんが、この判例時報の見出しを見て少し感動すら覚えてしまいました・・・う~む 

2007年3月12日 (月)

個人情報流出の責任のありか

 今日も、埼玉県春日部市で国民健康保険加入者の個人情報と個人事業者のデータが大量にネットで流出したと報じられています。市役所職員の個人所有パソコンに入れていたファイル交換ソフト「シェア」(つまり、winnyではない)による流出ということです。

 なぜか、自衛隊や警察や自治体などの公務員が個人のパソコンに入れていた情報がファイル交換ソフト(およびウイルス)によって流出する事件がしょっちゅう報道されるのですが、このような事件の報道を見てもファイル交換ソフトの怖さだけを印象づけている感じを受けます。

 そもそも、今回のような国民健康保険加入者の保険証番号、住所、生年月日などといった個人情報や、自衛隊の機密情報、警察の捜査情報が、どうして簡単に個人所有のパソコンに入れられるのでしょうか?北海道警の捜査情報流出事件の裁判でも問題にはなっていましたが、このような情報をコピーして個人のパソコンに入れること自体が大問題です。職員が退職したり、パソコンを下取りに出したりする場合の管理などまで、役所が継続してしているとは思いにくいですし、その前提として、データコピーやデータ持ち出しの許可というような制度があるのでしょうか?

 仕事が忙しいからといって自宅に持ち帰ることが認められるようなデータでもなく、明らかに組織側のデータ管理、労務管理が間違っているとしか思えません。セキュリティ対策には予算もかかるし、また、現実の仕事の面で面倒ですらあります。しかし、このような管理の甘さに目を向けずに、単に職員個人の責任やファイル交換ソフトのせいにしていると必ず取り返しのつかないことが起きてくると思うのですが。

(追記 3/13)

本文投稿のすぐ後に、大日本印刷の大量の個人情報流出が報道された。春日部市にしろ、大日本印刷にしろ、アウトソーシング(外注)によってコスト削減の利益を受ける者は、その責任を外注先に押し付けてはいけないのではないのかな。裁判になった京都府宇治市の情報流出事件も同じだし、情報漏洩とは別だが、関西テレビの「あるある」事件も同じ・・・

2007年3月11日 (日)

スカイビズ事件の損害賠償請求

 5年ほど前に世界的に話題になった事件です。ホームページのスペースをレンタルするという触れ込みで儲け話に勧誘するという悪質商法(マルチ商法)を行っていたアメリカのスカイビズ(skybiz)社の事件。当時、日本でも大学生など若い人たちを中心に被害があり、ニュースなどでも取り上げられました。

 大阪弁護士会消費者保護委員会の私の所属する部会(電子商取引や独占禁止法関連を担当している)でも検討したことがありました。この会社は倒産したのですが、意外に被害者からの相談などが表面化せず(泣き寝入りで諦めた人が多かったのでしょうけど)、そのままになっていました。

 その事件について、このほど国民生活センターのホームページに以下のような記事が掲載されました。(http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/skybiz.html

「米国FTCが行っているスカイビズ被害者への損害賠償救済措置は、当初、2004年7月31日を提出期限としていましたが、その後延長され現在も継続して受け付けています。しかし、2007年3月30日付けをもって受付を終了することになったとの連絡がありました。

 まだ、「損害賠償請求」を届け出ていない被害者の方は、至急、下記のWebサイトから損害賠償請求提出の手続きを行ってください。

SkyBizの損害賠償計画(日本語版) https://www.skybiz-redress.com/index-jap.html

被害を回復するための「損害賠償請求」提出期限:2007年3月30日 」

 詳しくは、国民生活センターのホームページを参照してほしいですが、FTCというのは、日本でいうと公正取引委員会です。FTCスカイビズ社相手に裁判をし、その結果、FTCが被害賠償金の支払を会社から受け、それを広く世界中の被害者に分配するという手続がなされているのです。アメリカには、FTCや州の司法当局が被害者(国民)に代わって賠償請求ができたり、また、クラスアクション制度もありますが、いずれのな制度も日本にはありません。

 しかし、このように悪徳業者から利得を吐き出させて被害者の救済に充てるべきだという指摘は、消費者問題に取り組んでいる弁護士たちからも以前からなされています。新設された消費者契約法上の消費者団体訴訟でも、差し止めは求めることができますが、被害者に代わって損害賠償請求をするということまでは認められていません。

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2007年3月 9日 (金)

アクセス急上昇???

 この地味なブログが、今日の午前11時頃から急にアクセスが増えだした。あれっと思って調べてみると・・ニフティのホームページ上の「昨日アクセスが急上昇したブログ」というランキングで何と1位に載っています。しかも、ニフティのほうで、ご丁寧に「専門家が語る日本音楽著作権協会とおふくろさん問題」などと勝手にタイトルを付けてる。

 冒頭に勝手なタイトルをつけるのは、同一性保持権の侵害だぁ、などと言ってみるか。

 森進一・おふくろさんネタを書いてたので、検索サイトから訪問される人が急増したのは事実ですが、アクセスが急増したのは一昨日で、昨日はそれよりは落ちてるのですけどねぇ....まぁ、これもいいか。私も、ニフティサーブのパソコン通信時代から約15年のおつき合いになるので、大目に見ることにしておこう。

 もし、ニフティの付けたタイトル「専門家が語る日本音楽著作権協会とおふくろさん問題」どおりの記事をご覧になりたい方は、私のブログではなく、小倉秀夫弁護士のブログを訪問されたほうが詳しいと思いますよ。

http://benli.cocolog-nifty.com/benli/

2007年3月 8日 (木)

民事の時効の中断事由(時効談義:その3)

 ひとまず「おふくろさん」から離れて、時効の話に戻ります。

 民事の時効の基本的な法律上の規定は、民法の第1編(総則)の第7章(時効・144条~174条の2)というところに書いてます。全部解説すると大変な事になるので、3,4回に分けて要点のみを説明する予定です(あくまでも「予定」)。

 民事の時効は、大きく分けて、「取得時効」と「消滅時効」の2つに分かれるのですが、民法では、その前に総則的な規定が置かれています(144条~161条)。これだけでもちゃんと説明するとえらい事になるので、今回は、ここのところの要点のみ。

 まず、時効というのは期間が経過すれば勝手に成立するのではなく、当事者が「援用」しないと駄目よ、というのが145条期間経過前にあらかじめ時効の利益は放棄できないよ、というのが146条。ちょっと飛んで、158条~161条に「時効の停止」という制度について規定されてますが、これは省略。

 で、簡単そうで難しいのが、その間にはさまってる時効の中断という制度(147条~157条)。実際の裁判でも、この中断に関して事実関係や法律解釈がいろいろと争われることが多く、結構やっかいです。私の顧問先の会社でも、これに関する相談がしょっちゅうあります。

 「時効の中断」というのは、簡単にいうと、取得時効でも消滅時効でもよいのですが、ある時効の期間が進行しているときに(まだ時効期間が全部経過してない時点ですね。)、ある事由があれば、時効期間が止まり、その事由が終わった時点から、再度時効期間が始まる(これまで経過した期間の途中からではなく、ゼロからです。)という制度です。この時効が止まる事由が「(時効)中断事由」です。

 中断事由については、147条を基本として、以下156条まで規定されてますが、素人判断は禁物です。例えば、147条の最初に中断事由として「請求」というのが書いてあります。これだけを見て、例えば、借金を払ってもらえないときに、請求書でも出して(あるいは電話でもして)請求さえしておれば時効にかからないのだな、と考えていると大きな間違い。しかし、実際そのように理解している人も世間には多いのです。ここでいう請求」による時効中断をするためには、原則として、訴訟提起などの法的な手続が必要です。詳細は、149条~152条ですが、実際のいろいろな法的手続(破産や民事再生などの倒産手続も含む)において、中断事由となるか、いつから中断か(始期)、いつまで中断か(終期)など難しい問題が未解決のまま残っている所も多いのです。

 では逆に、上に書いた単純な請求(訴訟などではないもの)だけでは中断しないのか、というと、そうでもありません。これは、153条にいう「催告」にあたるのですが、この規定では、催告それ自体は請求のひとつとして中断事由なので、時効が中断するのですが、「催告」から6ヶ月以内に、訴訟などの法的手続をしなければ、せっかく催告して時効を中断させた効力がなくなります。ややこしいですね。

 そして、これも誤解している人が多いのですが、この6ヶ月という期間は更新がききません。どういうことかというと、一度、催告をして、それから6ヶ月以内にまた催告をするというように、催告だけを繰り返していたのでは駄目ということです。したがって、半年毎に請求書を送付しておれば時効は止まる、という話を聞くことがありますが、全く間違いですので、注意してください。

 また、「催告」や「承認」などの事由は、口頭であっても無効ではないのですが、後で証明できなければ困るので、きちんと証拠の残る方法でしておく必要があります。できれば、専門家に相談されることをお勧めします。  

2007年3月 7日 (水)

まだ「おふくろさん」

 本日、JASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)のホームページに、「『おふくろさん』のご利用について」というのが掲載されました。

 全文については、それぞれで見ていただくとして、要するに、付加バージョンについては、川内氏から意に反する改変に当たる旨の通知がなされ、同氏の同一性保持権(著作権法第20条1項)を侵害して作成されたものであるとの疑義が生じている、このため、改変されたバージョンを利用すると同一性保持権の侵害その他の法的責任が生じるおそれがあるので「ご留意ください」、という内容。

 さらに、あらかじめ、改変されたバージョンが利用されることが判明した場合には、利用許諾をできません・・」ともしている。そして最後に、なお、オリジナルバージョンの「おふくろさん」は、従来どおりご利用になれます

 よく読んでもらうとわかるが、JASRAC自身が、この改変を同一性保持権の侵害と認めたものではありません。川内氏からその旨の通知があり、疑義が生じている、だから、法的責任が生じる恐れがあるので留意せよ、ということ。つまり、リスクがあるから皆さん自分で注意してね、問題が起こるかもね、という注意書きですね。

 しかし、この問題、いつまでフォローすべきなのか、悩む.... 

2007年3月 6日 (火)

「おふくろさん」問題つづき

 森進一氏と川内康範氏とのトラブルは、どうやら著作権の話を離れて、すっかり正統派のワイドショーネタになってしまったようですね。

 このブログ左下でリンクさせてもらってる壇弁護士のブログでも、この話題を取り上げてます。JASRACとの契約関係はさすがに私なんかより具体的に指摘されてますね。おかげで、JASRACの信託契約約款というのを初めて読むことができました。

 紅白などでの問題の歌唱内容について、同一性保持権侵害があるかどうかについては、壇弁護士の指摘通り、私もあれで侵害になるという見解には疑問を持っています。

 ただ、ワイドショーなどでも混同してるかなと思うのは・・・・・

 あの「おふくろさん」の前に別のメロディと歌詞をひっつけた作品、一応「おふくろさん+α」と命名しておきますが、

(1)この「おふくろさん+α」が、川内氏の著作権(同一性保持権)を侵害するかどうか、という問題と、

(2)川内氏が今後一切「おふくろさん」を含めた自分の作品を歌うことを森氏に禁止できるか、という問題とは

別問題であることです。まぁ、最初に書いた通り、ワイドショーでは、そんな法的にどうたらということは既に超越してしまってるようですけどね。

 (※なお、ここではややこしいので、JASRACの存在は無視します。)

 仮に「おふくろさん+α」が、川内氏の権利を侵害しているのだとすれば、当然ながら、川内氏は森氏が「おふくろさん+α」を歌うことを拒否できるでしょう。著作権侵害行為をやめろということは権利者としてできます。

 しかし、だからといって、本来の「おふくろさん」を歌うことまでやめろと言えるかどうかは法律的には別の問題になります。感情的には大きなつながりがあるでしょうけども。

 かえって、ややこしくなったかな。どっちにしても、深入りすると疲れそうな話題ですね。

2007年3月 3日 (土)

刑事事件の時効(時効談義:その2)

 まず、刑事事件についての時効です。前に書いたように、これにも「公訴時効」と「刑の時効」があります。ただし、通常、問題になるのは「公訴時効」のほうです。ニュースなどで、たとえば「グリコ森永事件の時効が成立」という場合には、この「公訴時効」を意味しています。

 一方、「刑の時効」というのは、刑法に規定されており(31条~)、裁判で刑の言い渡しを受けた者が、法定の期間の経過によりその刑の執行が免除されるという制度のことで、あまり一般的には問題になることは少ないですね。

 ということで、以下は通常問題となる「公訴時効」についての話です。これは、刑事訴訟法に規定されています(250条~) 。簡単に言ってしまうと、「公訴時効」という名前の通り、犯罪を犯してから一定の期間が経過すれば、もう起訴(公訴の提起)できない、という制度です。

 最近のドラマなどは、比較的まともになってますが、以前の刑事ドラマなんかで、犯罪者が捕まらずに長年逃げていて、時効の期間が終了する直前に、主人公の刑事に追いつめられ捕まってしまうというようなのが、よくありました。しかし、これは間違いです。警察に逮捕されただけでは時効の進行は止まらないのです。期間が終わるまでに、刑事事件として起訴しなければなりません。したがって、いくら犯人を追いつめて手錠をかけても、それから犯人を取り調べて検察庁に送検し、検察官によって、起訴しなければならないのですから、どんなに急ぐにしても、ドラマのように時効まで後1時間という時点で手錠をかけたのでは普通はとても間に合いません。

 「公訴時効」の期間は、刑事訴訟法250条に規定があります。

 1.死刑にあたる罪については25年

 2.無期の懲役又は禁錮にあたる罪については15年

 3.長期15年以上の懲役又は禁錮にあたる罪については10年

 4.長期15年未満の懲役又は禁錮にあたる罪については7年

 5.長期10年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金にあたる罪については5年

 6.拘留又は科料にあたる罪については1年

※なお、最近の法改正で、死刑に当たる罪については15年から25年に、無期の懲役又は禁錮に当たる罪については10年から15年に延長され、また、長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年の時効期間が設けられました(平成17年1月1日に施行)。今回、ネット上の記事をいくつか見ましたが、古い法律に基づいて解説されているものも多いですので(改正前に書かれた記事であれば、当然なのですが)、ご注意ください。なお、この改正に関して付則で、改正前の犯罪については改正前の時効期間が適用されることに決められています。

 ここに書かれている長期何年とか、死刑などという刑ですが、刑法などに書かれている刑の種類、期間が基準です。決して、それぞれ当該個別の犯罪事件について言い渡される刑(処断刑)によって変わるのではありません(でなけりゃ、判決してからでないと、時効期間がわかりませんよね。)。例えば、詐欺罪であれば、10年以下の懲役ですから一番長期は10年となり、(上記5の長期10年未満ではなく)長期15年未満の懲役の罪として、7年が「公訴時効」の期間ということになるのです。窃盗罪も同じですね。殺人罪だと重いのは死刑ですので、(改正前は15年でしたが)25年が「公訴時効の期間となりますね。

 国外へ逃げている場合などの時効の停止については刑事訴訟法255条共犯がいる場合の時効の停止については同法254条2項を参照してください。

 細かいことを言えば、期間の起算点である「犯罪行為の終わったとき」(刑事訴訟法253条1項)というのはいつからか、など種々論点はありますが、刑事事件の時効に関しては、このあたりで終わります。

(民事事件の時効へ続く・・・たぶん)

 

2007年3月 2日 (金)

文部科学省・法科大学院設置計画履行状況調査の結果等について

本日、文部科学省から、「法科大学院設置計画履行状況調査の結果等について(平成18年度)」が発表されてました。これはいわゆるロースクールの実態についてのツッコミですが、このような法曹養成問題に限らず、我が業界もいろいろな面で大変になってきましたね。

  

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/03/07022710.htm

時効は何年ですか?(時効談義:その1)

 最近、私の仕事の中で、時効の問題が関係する相談や裁判が、結構多いことに気づきました。

 私の顧問先のある会社は、業務内容から債権管理に関する相談や訴訟が多いので、この会社の仕事で、しょっちゅう時効の話題がよく出てくるのは、まぁ当然かもしれません。しかし、それ以外の一般の個人顧客の相談でも時効が関係してくるものもよくあるし、訴訟になっている現在係争中の事件で、時効の主張が中心的な争点になっているものだけで(前述の顧問先の事件は除いて)2件あります。これは一般個人間の裁判です。

 「時効」という言葉は、日常会話でも使われ、法律家以外の一般市民もみな知っている言葉ですね。ニュースやドラマや小説などでもよくでてきます。法律用語にしては、身近な言葉といえるかもしれません。

 このように身近な言葉なので、それほど難しい問題はないかというと、決してそうではありません。結構、複雑で、奥が深いものです。

 相談者から「この時効は何年ですか?」と尋ねられることがありますが、相談者ご自身、漠然とした意味合いで「時効」という言葉を使っておられることもあります。相談者のお気持ちからすれば、私の方からズバっと「それは何年です!!」という答えを期待されているのだと思いますが、そう簡単に答えられないケースも結構あるのです。

 「時効」といっても、大きく分ければ、刑事事件に関する時効民事事件に関する時効があり、これは全く別物です。例えば、Aさんに殴られた被害者のBさんが相談者であるとすると、Aさんの傷害罪などの犯罪(刑事事件)についての時効と、BさんからAさんに対する損害賠償請求(民事事件)についての時効は、同じ「時効」といっても制度の目的も異なりますし、まず、その期間が違います。そして、期間を計算する起算点も違い、時効の進行が止まったりする制度も異なります。

 刑事事件の時効については、普通は刑事訴訟法に規定される「公訴時効」のことを指す場合が多いですが、「刑の時効」というのもあって、こちらは刑法に規定されています。

 民事事件の時効については、大きく分けると、「消滅時効」と「取得時効」に分けられ、どちらも基本的には民法の規定によりますが、特に「消滅時効」に関しては商法その他いろいろな法律を見なければならないことも多いのです。また、「消滅時効」と似たような制度に「除斥(じょせき)期間」というのもありますが、これは、専門家以外の方は、ひとまず「消滅時効の親戚みたいなもんだ」くらいに考えておいていただいてよいかと思います(もちろん違いはあるのですが)。

 一番多いのは、「消滅時効」を検討しなければならないケースですが、これだけに絞っても奥が深く、まだまだ裁判例や学説などを見ても、はっきりとしないケースが多いのです。

(不定期に続く・・・たぶん)

2007年3月 1日 (木)

メタタグへの商標記述と商標権侵害

ウェブサイトのトップページのhtmlファイルに、メタタグ(METAタグ)として登録商標に類似の言葉を記述した事案で、この記述が商標としての使用に当たるとして、商標権侵害に基づく損害賠償請求を認めた判決です。

平成17年12月8日大阪地裁判決(確定)〈判例時報1934号109ページ~〉

この事案では、原告の商標権と被告の使用した言葉(標章)とが類似と言えるか、についても争点となっており、判決はこれを肯定していますが、これは一般の商標権侵害の訴訟でもよくある争点です。その他にも、先使用権や損害額算定などの争点もありますが、ここでの検討は省略します。

メタタグ自体、通常はブラウザでサイトを閲覧しても見ることはできないものであるため、これに記述した言葉について商標権侵害が問えるか、という点が問題となりました。(※なお、平成14年の商標法改正によって、インターネット上の標章の使用についても商標の使用となる規定されています。)

メタタグの記述もいろいろ種類があり、ここでは説明を省きますが、ここで問題となった記述については、グーグルなどの検索サイトでサイトが検索表示された場合に、そのサイトの説明として、表示されるようになっています。逆に言えば、検索時にそういう表示がされるようにメタタグに記述していることになります。

例えば、私の事務所のホームページを「春陽法律事務所」をキーワードとしてグーグルで検索してもらうと、事務所サイトのタイトルの後に『春陽法律事務所〔弁護士石田文三:川村哲二:昇慶一〕】大阪の法律事務所です。法律相談(民事・刑事)、顧問契約などお気軽にご連絡ください。・・・・・』などという説明文が出てきます。この文章は、ウェブサイトを記述するhtmlファイルの中にメタタグとして書かれているのですが、事務所サイト自体を閲覧しても出てきません。そういったメタタグについての事案です。

そして、この判決は、「・・・・検索サイトにおいて表示される当該ページの説明についても、同様に、その役務に関する広告であるというべきであり、これが表示されるようにhtmlファイルにメタタグを記載することは、役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行為にあたるというべきである。」としました。

そして、サイト自体の表示にはどこにも、当該類似標章がないから商標の出所識別機能は害されないとの被告の主張に対しては、「・・・・検索サイトにおけるページの説明文の内容と、そこからリンクされたページの内容が全く異なるものであるような場合はともかく、ページの説明文に存在する標章が、リンクされたページに表示されなかったとしても、それだけで、出所識別機能が害されないということはできない。」としました。

この判決を素直に読めば、このケースは、検索ソフトでの検索画面上、説明文として出る以上は広告であり、商標権侵害に該当するということであり、もし、メタタグの記述といっても、説明文として表示されない部分への記述であれば、逆に、商標権侵害とはならないということになりますね。それは「商標としての使用」が要件である以上、当然ともいえます。しかし、その場合でも検索時のキーワードとしてひっかけるためのメタタグへの記述の場合は商標権者の立場としては微妙な問題も生じてくる可能性もあるような気がします。もっとも、最近の検索サイトはメタタグの記述内容は重要視していないようにも聞きますので、だとすると、あまり関係ないかもしれません。ただし、外国の裁判例では、このような場合にも侵害を認めている例もあるようです。

この判決については、板倉集一姫路獨協大学教授による評釈が判例時報1953号(213ページ~)に掲載されており、判決に疑問を呈しておられます。参考文献等も引用されていますので、興味のある方はご覧ください。

※※このココログ・ベーシックでも、xfy Blog Editor (JUST SYSTEM)が使えることが分かりましたので、それをちょっと使って投稿してみました。※※

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