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2007年2月 8日 (木)

TBCの個人情報流出判決

 今日、東京地裁で、TBC(東京ビューティセンター)の個人情報流出事件の損害賠償訴訟で判決が出ました。東京の紀藤正樹弁護士たちがやっていた裁判です。

 訴訟では、、1人当たり115万円の損害賠償を求めていましたが、1人2万2000―3万5000円の支払いを命じる判決です。慰謝料に1人5000円の弁護士費用を加算したようです。

 私たちのやっているヤフーの情報流出事件の大阪地裁判決(平成18年5月19日判決、判例時報1948号122頁)で、1人5000円の慰謝料と1000円の弁護士費用でした。これについては、現在大阪高等裁判所で控訴審が継続中です。今日のTBC事件は、これより先に提訴されていたものです。

 まだ、判決文を見てませんので、感想のみですが、TBC事件とヤフー事件の違いは、TBC事件のほうが個人にとっては漏らされたくない程度の高い情報(機微情報、センシティブ情報)が流出したという点にありますので、ヤフー事件よりもTBC事件のほうが賠償額が大きいこと自体は理由のあるところでしょう。ただ、いずれにせよ、両事件とも、損害賠償額の認定については疑問が残ります。企業から言えば、全被害者の合計額から考えれば大変な金額だと言いたいのでしょうが、訴訟費用、弁護士費用やその他の負担から考えれば、被害者個人が訴訟を提起する動機付けには全くならない賠償額です。これなら企業としても、個人情報保護のために大きなコストをかける気にはならないでしょうね。それが一番の問題です。

 個人情報流出の事件の多さ(今日もいくつか報道がありました)から考えて、企業にも十分その責任を考えてもらうためには、被害者も積極的に行動を起こすべきと思うのですが、今の状況では極めて難しいと言わざるを得ません。企業にとっては、賠償責任がないのに等しい結論となります。

 こういったひとりひとりの実害が少ない事案であっても、社会全体として追及すべき問題については、まもなく実施される消費者契約法の消費者団体訴訟(独占禁止法でも検討が始まっています)のようなシステムが必要なのでしょう。もっとも、この団体訴訟では損害賠償請求はできないので(差止請求のみ)、完璧ではないのですが。このような団体訴訟あるいはアメリカのクラスアクション制度や懲罰的損害賠償制度(実損額の賠償だけでなく、懲罰的な意味での罰金的な損害賠償を認める制度)を念頭におかなければいけないと思います。

 でなければ、1万人の情報が流出したとしても、仮に1人10000円の賠償、合計1億円としても、実際には、その請求のための負担をしようとする者はほとんどいないという現状では、企業側の対応はほとんど変わらないと思いますね。

 なお、個人情報保護法の制定による、過剰な反応についての問題は、これとは別です。政府機関も含めて、法律についてきちんと理解しないままに、個人情報保護について、あまりにも形式的な対応をしているため、馬鹿な対応がなされている点が問題なのであり、情報流出の責任とは別のレベルの問題なのです。

 一般の方々には、今日の東京地裁のTBC事件も私たちのヤフー事件も、どちらも個人情報保護法の施行前の事件であって、同法の適用により認められた請求ではないということは、是非知っておいていただきたいと思います。

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コメント

 蛇足かもしれませんが、ちょうど今日報道された「KDDI、解約客22万人の個人情報紛失」というのとは、TBCやヤフーの事件とは意味合いが全然違うのだろうとは思います(もっとも、KDDIの説明が正しいとしてのことですけど)。
 でも、ちょっとしたことで、大量の個人情報がばらまかれる可能性のある時代であることを前提に、企業は行動していただきたい。このことの重さと、個人情報についての過剰反応は全く別というのが、なかなかわかっていただけないのですよねぇ。

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