フォト

weathernews

ツイッターでつぶやく

無料ブログはココログ

2018年2月20日 (火)

芸能界の契約実態についてのヒアリング・アンケート結果(公取委)

 前回取り上げました「「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表」ですが、この検討会の基礎資料とするために公正取引委員会事務局が、フリーランス、スポーツ、芸能といった各業界の事業者団体、事業者、個人、有識者など幅広くヒアリングを行い(合計91者)、また、フリーランス、スポーツ選手、芸能人などを対象に、webサイト上でアンケートを実施し、549件の回答を得ています。

 この結果については、「人材獲得競争に係る実態ヒアリング及びフリーランス等に関するウェブアンケートの結果」としてまとめられており、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)の検討会ページに公表されています(「人材と競争政策に関する検討会」の「報告書」欄の「・別紙3(事務局ヒアリング及びアンケート結果)」からPDFファイルがリンクされています。

 今回は、この調査結果の中から、芸能人に関するところを抜粋してご紹介したいと思います。スポーツ選手関係は、またまとめたいと思います。

 なお、これらの事項は、公正取引委員会が違法とか違法のおそれを認定したということではありません。ただ、調査結果のとりまとめで、これらの事項を掲げているということは、少なくとも違法のおそれがあるかもしれない、ということで抽出されていることは推測できると思います。
 そして、この調査結果などを踏まえて、前回ご紹介の報告書ができていますので、公正取引委員会が今後どういう形で、関与していくか、について期待したいところです。

 すぐにどうこうはないかもしれませんが、公正取引委員会から事情聴取もされた音楽芸能プロダクションの事業者団体である日本音楽事業者協会(音事協)が、芸能プロダクションと芸能人との契約のひな型の変更を行うとの報道もなされています。

 ヒアリングやwebアンケートで寄せられた芸能関係の意見は以下のとおり。

  •  多額の報酬を示唆することに基づく芸能人の引き抜きは行わない旨の共通認識があり、実際、芸能事務所間の芸能人の引き抜きは盛んではない。

  •  業界団体において、製作者が、出演交渉の相手方を固定化して、製作者が交渉相手を頻繁に変えなくてはならない事態にならないようにするため、芸能事務所が他の芸能事務所に対して引き抜きを行わないよう指導している(ただし、芸能人が自らの意思で移籍をすることは禁止していない。)。

  •  契約満了時に芸能人が契約更新を拒否する場合でも、芸能事務所のみの判断により、契約を一度更新できることが契約上規定されており、また、芸能事務所の判断で当該規定が実施される場合がある。

  •  楽器や移動車等の多くの経費が必要な芸能人や、アイドルのようにスカウト~育成~宣伝費等,発掘から売れるようになるまで経費が莫大にかかる芸能人については、多大なコストがかかることから、芸能事務所は、その投資回収が済むまでの間、所属芸能人の移籍を認めないことがある。また、デビュー前の所属芸能人との間で、退所から一定期間は他の芸能事務所に所属できない旨を盛り込んだ契約を締結することがある。

  •  ある芸能事務所は、契約を更新しない意思表示をした芸能人に対し、これを翻意させるため、契約期間中であるにもかかわらず、報酬の支払を遅延したり、当該芸能人の業務を受託しない場合がある。

  •  ある芸能事務所は、契約期間満了に伴い芸能事務所を移籍しようとした芸能人が移籍できないようにするため、当該芸能人が移籍しようとした芸能事務所に対し圧力をかける、芸名を使用させない、芸能人としてのブランドイメージを損なわせる虚偽情報を流布する等により移籍を妨害している。

  •  ある芸能事務所は、所属芸能人に対する移籍への萎縮効果を目的として、業務委託契約に伴い離籍した芸能人に関する悪評を流布し、当該芸能人と製作者等との間の契約成立を妨害した。

  •  ある芸能事務所は、契約期間中にある芸能人と契約期間延長交渉時に、実績を踏まえ報酬額アップを交渉されても、育成投資コストの回収が終わっていないことを理由に協議に充分応じなかった。

  •  芸能人は、通常、芸能活動を行うに当たり、芸能事務所との間で「芸能人は専属芸術家業務を行うこと」及び「芸能事務所はプロダクション業務を行うこと」を内容とする契約を締結している。芸能事務所の事業者団体は、契約書の雛形を作成し、加盟する芸能事務所に対して、当該契約書の使用を推奨している。契約書の雛型には、契約満了時に芸能人が契約更新を拒否する場合でも、芸能事務所のみの判断により、契約を一度更新できることが規定されている。

  •  芸能事務所の提示する条件に応じず移籍を求めた場合には、芸能事務所とトラブルを生じたといったネガティブな印象が業界に広がり(場合によっては、芸能事務所がそのような情報を流布し)、テレビ局などが仕事を発注しなくなり、芸能活動が困難となるため、提示された条件で契約せざるを得ない。

  •  日本では、素人の新人を芸能人として育成するために、人材育成投資費用(レッスン代、オーディション代、衣食住等に係る費用)を芸能事務所が負担していることがあり、また、投資・育成期間は長期間になることがある。かかる費用の回収を図るために、芸能事務所が芸能人の移籍や独立を容易には認めない場合がある。

  •  芸能事務所の中には、芸能人の育成投資費用について、芸能人個々人ではなく、所属芸能人全体で計算していることがあり、いわゆる「売れっ子」の芸能人の売上げを、まだ育成期間中にある他の所属芸能人の費用や、売れていない・売れなかった所属芸能人に対する投資の回収に充てている。

  •  (取引条件等についてやむを得ず同意したのは)伝統的な慣習が大半のため。

  •  キャンセルになった仕事の分を自分で新しく探さねばならず、ひと月強ほど、収入が減少した。

  •  言われたことに納得がいかず、反発したり断ったりすると「仕事なくなるよ」等の脅迫的言辞を幾度となく言われたことがある。実際そうなると思ったし、業界丸ごとそうなっているのは事実であるから仕方なく従わざるを得ない。

  •  契約書などの書面を作成すると言っておきながら、それを数ヶ月にわたって放置される。また、書面が存在しないため、実質の責任が相手に発生しない。

  •  芸能人は、通常、芸能活動を行うに当たり、芸能事務所との間で「芸能人は専属芸術家業務を行うこと」及び「芸能事務所はプロダクション業務を行うこと」を内容とする契約を締結している。芸能事務所の事業者団体は、契約書の雛形を作成し、加盟する芸能事務所に対して、当該契約書の使用を推奨している。契約書の雛型には、契約満了時に芸能人が契約更新を拒否する場合でも、芸能事務所のみの判断により、契約を一度更新できることが規定されている。

  •  芸能事務所の提示する条件に応じず移籍を求めた場合には、芸能事務所とトラブルを生じたといったネガティブな印象が業界に広がり(場合によっては、芸能事務所がそのような情報を流布し)、テレビ局などが仕事を発注しなくなり、芸能活動が困難となるため、提示された条件で契約せざるを得ない。

  •  日本では、素人の新人を芸能人として育成するために、人材育成投資費用(レッスン代,オーディション代、衣食住等に係る費用)を芸能事務所が負担していることがあり、また、投資・育成期間は長期間になることがある。かかる費用の回収を図るために、芸能事務所が芸能人の移籍や独立を容易には認めない場合がある。

  •  芸能事務所の中には、芸能人の育成投資費用について、芸能人個々人ではなく、所属芸能人全体で計算していることがあり、いわゆる「売れっ子」の芸能人の売上げを、まだ育成期間中にある他の所属芸能人の費用や、売れていない・売れなかった所属芸能人に対する投資の回収に充てている。

  •  (取引条件等についてやむを得ず同意したのは)伝統的な慣習が大半のため。

  •  キャンセルになった仕事の分を自分で新しく探さねばならず、ひと月強ほど、収入が減少した。

  •  言われたことに納得がいかず、反発したり断ったりすると「仕事なくなるよ」等の脅迫的言辞を幾度となく言われたことがある。実際そうなると思ったし、業界丸ごとそうなっているのは事実であるから仕方なく従わざるを得ない。

2018年2月15日 (木)

「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表

 注目されていた公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」の報告書が本日公表されました。

 → 「人材と競争政策に関する検討会」報告書について (公正取引委員会サイト)

 報告書は本文が47頁となっており、上のリンク先からPDFファイルにリンクしています。   

100_2

           (「報告書概要」 公取委サイトより)

 まだ、公表されたばかりで、読み込めてませんが、ひとまず一部を抜粋しておきます。

 まず、労働法と独占禁止法との関係については、

「・・・・1947年の独占禁止法立法時には,「人が自分の勤労を提供することは,事業ではない」として,労働者の労働は独占禁止法2条1項の「事業」に含まれないとの解釈がなされ,公正取引委員会は,これらを踏まえて独占禁止法を運用してきた。
 しかし,前記第1の1〔1~5頁〕のとおり,就労形態が多様化する中で,独占禁止法上も労働法上も解決すべき法的問題が生じてきている。さらに,近年,労働契約以外の契約形態によって役務提供を行っている者であっても,労働組合法上の「労働者」に当たると判断される事例も生じている。このように労働契約を結んでいなくとも「労働者」と判断される者が,独占禁止法上の事業者にも当たることも考えられる。
 以上のことを踏まえると,労働者は当然に独占禁止法上の事業者には当たらないと考えることは適切ではなく,今後は,問題となる行為が同法上の事業者により行われたものであるのかどうかを個々に検討する必要がある。同様に,独占禁止法上の「取引」についても,その該当の有無を,取引の類型ごとに一律に整理するのではなく,独占禁止法上禁止されている行為(後記第5〔15~22頁〕又は第6〔22~44頁〕の行為)に該当する行為が行われていると認められる場合に,その行為のなされている取引が独占禁止法上の「取引」に該当するかどうかを個々に検討することが適切である。そして,労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる場合,それらの適用関係について検討する必要がある。
 そもそも独占禁止法立法時に前記のとおり労働者の労働は「事業」に含まれないとの解釈が採られたのは,使用者に対して弱い立場にある労働者保護のため,憲法の規定に基づき労働組合法,労働基準法を始めとする各種の労働法制が制定されたことを踏まえたものであった。この意義自体は現在も変わらないことからすれば,独占禁止法立法時に「労働者」として主に想定されていたと考えられる伝統的な労働者,典型的には「労働基準法上の労働者」は,独占禁止法上の事業者には当たらず,そのような労働者による行為は現在においても独占禁止法の問題とはならないと考えられる。加えて,労働法制により規律されている分野については,行為主体が使用者であるか労働者・労働者団体であるかにかかわらず,原則として,独占禁止法上の問題とはならないと解することが適当と考えられる。例えば,労働組合と使用者の間の集団的労働関係における労働組合法に基づく労働組合の行為がこのような場合に当たる。使用者の行為についても同様であり,労働組合法に基づく労働組合の行為に対する同法に基づく集団的労働関係法上の使用者の行為も,原則として独占禁止法上の問題とはならないと解される。また,労働基準法,労働契約法等により規律される労働者と使用者の間の個別的労働関係における労働者(下記囲み部分参照)に対する使用者の行為(就業規則の作成を含む。)も同様である。ただし,これらの制度の趣旨を逸脱する場合等の例外的な場合には,独占禁止法の適用が考えられる。」

 そして、スポーツ選手や芸能人の契約に関する独占禁止法の適用に関しては、以下のような記載がありました。                              

「例えば,スポーツ分野においては,複数のクラブチームが共同することで初めてプロリーグという一つの事業が成立する場合があるが,そのとき,複数のクラブチームが共同して選手の移籍を制限する行為はプロリーグの魅力を高めることを通じて消費者に対して提供するサービスの水準を維持・向上させる目的から行われているとの主張がある。
 これは,人材獲得市場における競争は阻害されるものの商品・サービス市場における競争は促進され,またこれを通じて人材獲得市場における競争も促進されるという主張と考えられる。そのような移籍制限行為が当該目的の実現に不可欠であるのか,商品・サービス市場での競争促進効果(消費者利益の向上等)の程度や,それが人材獲得市場での競争阻害効果を上回るものであるか,といった点も含めて総合的に考慮した上で判断されることになる。また,目的に比べてその手段が相当か,同様の目的を達成する手段としてより競争制限的でない他の手段は存在しないのかといった内容,手段の相当性の有無も考慮の上で判断される。」          

「例えば,芸能事務所やクラブチームが特定の者と一定期間の専属契約を締結し,その者の市場における価値の創造・拡大に資する(例えば,新人芸能人や新人選手の育成)とともに,その芸能人や選手の肖像等を芸能事務所等や本人以外の第三者が利用する取引の円滑化を図る場合があるが(後記脚注86参照),そのような事情の有無も含めて考慮した上で判断される。育成費用の回収を目的とする場合の具体的な考え方は,前記第5の3〔17~20頁〕の育成費用を回収する目的である場合と同じである。
 一方,契約期間が終了しても,既存の提供先である発注者の一方的な判断により専属義務を含む役務提供に係る契約を再度締結して役務提供を継続させる行為が,芸能事務所と芸能人の間の契約において行われる場合がある。芸能事務所と芸能人の間の契約が一度終了した後も,芸能事務所と第三者の間の当該芸能人についての契約が継続していることを理由に行われる場合,その必要性の有無も含めて考慮した上で判断される。」

「役務提供者が今後事実上移籍・転職ができなくなるほどの程度である場合,その不利益の程度は相当大きい。
 また,契約期間終了後は再契約をしないとの意向を示した役務提供者に対して,それを翻意させるために,発注者が役務提供者に対して,報酬の支払遅延や業務量の抑制などの不利益な取扱いをしたり,悪評の流布等により取引先変更を妨害し再度契約を締結させたりするといった行為についても,不利益の程度がより大きくなる場合がある。」

2018年2月14日 (水)

改正民法(債権法)と「催告後の債務承認」

 このブログを開設したのは2006年7月ですが、ろくに記事も書かずにいて、再発進したのが2007年1月からです。いつのまにか11年になりました。
 当初はネットでブログを読む人もそんなにおらず、政治的なことも含めて言いたい放題を書いてましたが、途中で、さすがにマズいと思い、あまりに問題ありそうな記事は削除しております(苦笑)

 さて、当初の2017年の3月から6月にかけて、「時効談義」として、番外編含めて11本の記事を書きました。もっぱら民事の消滅時効の話ですが、刑事の時効の話も混ざっています。

 御存じのように、民法(債権法)の大改正が昨年の国会で成立し、再来年2020年4月に施行されることとなっています。この改正民法では、消滅時効の部分も大きく改正されることとなりました。そうなると、この「時効談義」の内容も古くなってしまいます。もちろん、昔の記事は、内容が古くなったり、場合によっては、改正や新しい判例が出たりして、現時点では不正確ということは、他の場合でもありますし、いちいち全部修正することはできませんけども、この「時効談義」については、少しずつでも改正の点を解説していこうかと思っております(順不同に、のんびりと、です。)。

 で、その第1段です。


「催告後の債務承認と民法153条(時効談義:その9)」 (2007/5/23)について。

 詳しくは読んでいただくとして、要するに、現行民法153条により、債務の履行を請求(「督促」)しておれば、6ヶ月間は消滅時効期間が延びる形となるけれども、その間に、裁判等の手続をすることが必要となっているが、裁判等ではなくて、債務者の債務承認では駄目なのか、という問題について、条文の説明と大阪高裁の判決を紹介したものです。大阪高裁は、承認でもいいとし、最高裁も上告受理申立を不受理としました。

100_2


 したがって、民法の規定の文言上はちょっと違う形になるわけですが、この点を今回の民法改正でどのように変わったかといいますと、結論的には、上記判決と同様に承認でもいい、ということになりました。

 なお、現行民法消滅時効の「中断」は、改正民法では、「完成猶予」「更新」というものに置き換わっていて、ここは大きな改正点ですが、これについては、また別の機会に書きます。

 まず、現行民法153条は、「催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て・・(中略)・・をしなければ、時効の中断の効力を生じない。」となっていて、この裁判上の請求などの列挙事由に債務承認が入っていなかったことから、上記の裁判のような争点が出てきたわけです。

 しかし、改正民法150条1項では、「催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」としているだけですので、この6箇月の間に、債務者による債務承認があれば、消滅時効期間は「更新」(現行民法の「中断」)されることになります(改正民法152条1項参照)。

 つまり、規定の明文上からも、この問題は解決されたことになったものですね。

2018年2月10日 (土)

新しい「医療広告ガイドライン」と従来の「医療機関ホームページガイドライン」との関係

 前回、前々回と、今般、厚生労働省の検討会で承認された「医療広告ガイドライン(案)」について書いてきました。

 → 「医療広告ガイドライン案が承認される(厚生労働省検討会)」 (2/5)

 → 「医療広告ガイドライン(案)における「広告」」 (2/6)

 これまで厚生労働省は、医療機関のホームページなどについては、当該医療機関の情報を得ようとする目的を有する者が検索等を行った上で閲覧するものであるとして、原則として、医療法の対象となる広告とは見なしていませんでした。
 しかし、現実には、美容医療サービスなど自由診療を行う医療機関について、ホームページなど掲載の治療内容や費用と、医療機関からの説明・対応とが異なるなど、ホームページ掲載情報によるトラブルなども多く発生していました。そこで、これに対応するために、医療法の広告規制対象には含まれないとしながらも、インターネット上の医療機関のホームページ全般の内容に関する規範を定めて、関係団体等による自主的な取組を促す、として、 「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針」(医療機関ホームページガイドライン 平成24年9月)を定めていたものです。

 しかし、今般、医療法規制対象の「広告」に、ホームページなどのwebサイトも含まれることとなったため、従前の「医療機関ホームページガイドライン」の内容も、新しい「医療広告ガイドライン」に取り込まれることとなりました。つまり、従来の「医療広告ガイドライン」「医療機関ホームページガイドライン」が廃止されて、新しい「医療広告ガイドライン」に一本化されることとなったものです(本年6月1日施行予定)。   
 これによって、新しい「医療広告ガイドライン」には、従来の「医療広告ガイドライン」よりも、法律上禁止される広告の例示が増加しています。単に形式的に一本化されたというだけではなく、これまでの自主規制、行政指導の対象ではなく、違法な「広告」としての法律上の規制対象になったものですから、実質的にも厳しい規制になったわけです。

101

 たとえば、虚偽広告の禁止(医療法6条の5第1項)については、加工・修正した術前術後写真等の掲載や、治療後の定期的な処置等が必要であるのに「一日で全ての治療が終了します」、 根拠の提示もなく「○%の満足度」などというものは虚偽広告として取り扱うべきとし、また、非常に限られた患者等を対象に実施された調査や謝金を支払うことにより意図的に誘導された調査の結果など、公正なデータといえないものについても、同様としています。

 比較優良広告の禁止(医療法6条の5第2項第1号)は、事実であったとしても、「優秀性について、著しく誤認を与えるおそれがあるために禁止されるものであり、例えば、「日本一」、「№1」、「最高」等の最上級の表現その他優秀性について著しく誤認を与える表現は、客観的な事実であったとしても、禁止される表現に該当する」とされています。ただし、このような表現を除けば、必ずしも客観的な事実の記載は妨げないが、裏付けとなる合理的な根拠により客観的に実証できる必要がある、とされ、また、著名人との関連性を強調するなど、患者等に対して他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与えるおそれがある表現も、患者等を不当に誘引するおそれがあることから、比較優良広告として取り扱うとしています。
 具体例としては、「肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。」、「当院は県内一の医師数を誇ります。」、「本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。」、「芸能プロダクションと提携しています」、「著名人も○○医師を推薦しています」、「著名人も当院で治療を受けております」が挙げられています。

 また、誇大広告の禁止(医療法6条の5第2項第2号)については、「○○学会認定医」や「○○協会認定施設」などは、その学会や協会が活動実態のない団体の場合には、国民・患者を不当に誘引するおそれがあるとして、誇大広告として扱うべき、とされています。
 また、「○○の症状のある二人に一人が○○のリスクがあります。」、「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください。」、「○○手術は効果が高くおすすめです。」、「○○手術は効果が乏しく、リスクも高いですので、新たに開発された○○手術をおすすめします。」といったような表示は、科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、特定の症状に関するリスクを強調したり、特定の手術や処置等の有効性を強調することにより、医療機関に誘導するものであり、誇大広告として取り扱うべき、としています。

 そして、前々回にも紹介しましたが、個人の主観的な体験談などや術前術後のいわゆるビフォーアフター写真などの広告も原則として禁止されること(省令)については、もちろん新しい「医療広告ガイドライン」に記載されています。

2018年2月 6日 (火)

医療広告ガイドライン(案)における「広告」

 昨日の記事「医療広告ガイドライン案が承認される(厚生労働省検討会)」で紹介した改正医療法の医療広告ガイドライン(案)ですが、規制対象となる「広告」について少しご紹介したいと思います。(注:従来のガイドラインでも示されていた内容も含まれており、必ずしも改正部分だけではありません。)

 「広告」については、   

  1. 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
  2.    
  3. 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可       
    能であること(特定性)

の両方を満たした場合に「広告」に該当するものと判断するとしています(従来の「認知性」の要件は削除されました。)。

※追記(2/6) ここにいう「広告」は狭義のものではなく「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」をいいます。詳しくは、「医療機関の広告規制強化(医療法改正)」 (2017/6/14)をご覧下さい。

 1の「誘引性」は、例えば新聞記事については、特定の病院等を推薦している内容であったとしても、この「誘引性」の要件を満たさないものとして取り扱うけれども、当該病    
院等が自らのwebサイト等に掲載する体験談については広告に該当するとしています(そして、個人の体験談は、前回記事に書いたように禁止)。

 広告規制の対象となることを避けるために、外形的に上記1、2の要件に該当することを回避するための表現を行うこと考えられますが、例えば、 「これは広告ではありません。」、「これは、取材に基づく記事であり、患者を誘引するものではありません。」との記述があるけれども病院名等が記載されていたり、 「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません。」といった表示をしているけれども住所、電話番号やwebブサイトのアドレスなどから特定が可能であったりする場合には、実質的に上記1、2の要件をいずれも満たすものとして、「広告」に該当するものとして取り扱うことが適当である、としています。

 また、新しい治療法等に関する書籍等に「当該治療法に関するお問い合わせは、○○研究会へ」などと掲載されている場合のように、直接には病院等を特定しないで、規制対象となることを回避しようとする場合もありますが(いわゆるバイブル商法、タイアップ本など)、連絡先の「○○研究会」や出版社に問い合わせると特定の医療機関をあっせんしていることが認められる場合などは、実質的には、上記1、2の要件を満たし、広告として取り扱うことが適当な場合がある、としています。

 今回の案では、新たにステルスマーケティング(ステマ)についても触れられており、患者などに広告と気付かれないように行われる、いわゆるステルスマーケティング等についても、医療機関が広告料等の費用を負担するなどの便宜を図って掲載を依頼しているなど、実質的には上記1、2の要件も満たし広告として取り扱うことが適当な場合がある、としました。

 広告規制の対象者としては、改正医療法6条の5第1項に「何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引する為の手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」とされています。   
 したがって、医療機関などだけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者又は一般人などなど、何人であっても広告規制の対象となります。

 このガイドラインについては、もう一回書くつもりです。関係者の皆様、研修セミナーなどのお仕事のご依頼お待ち申し上げております(笑)

2018年2月 5日 (月)

医療広告ガイドライン案が承認される(厚生労働省検討会)

 「医療に関する広告」(医業、歯科医業、病院、診療所に関する広告)については、医療法により制限されています。しかし、従前、webサイト(ホームページなど)については、原則として、法律上の規制対象とはなっていませんでした(業界の自主取組や行政指導の対象)。

 しかし、特に美容医療(美容整形)に関する相談件数が増加するなど、問題が指摘され、消費者委員会からも、医療機関のwebサイトに対する法的規制が必要である旨の建議がなされ、昨年(平成29年)、医療法の改正により、他の広告媒体と同様に規制の対象とし、虚偽又は誇大等の表示を禁止し、是正命令や罰則等の対象とすることとされました。
 なお、今回の改正は、美容医療における行き過ぎた広告の問題がきっかけとなっていますが、規制対象は美容医療だけでなく、全ての医療機関に関する広告全般が対象となっていますので、医師、歯科医、病院等の関係者は、webサイトやブログなどでの表現について改めてチェックしておく必要があります。また、医療法だけではなく、景品表示法、医薬品医療機器等法(旧・薬事法)、健康増進法、不正競争防止法などの他の広告・表示の規定が適用されていることも要注意です。

 この医療法改正に伴って、省令、ガイドラインの内容を検討してきた厚生労働省「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(1月24日開催)で、省令案、医療広告ガイドライン案(仮称「医療若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」)が先日、承認されています。このまま正式決定を経て、本年6月1日から施行される予定になっています。

 改正医療法は、その6条の5第1項において、何人も、医業、歯科医業、病院、診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下、単に「広告」)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない、として虚偽広告を禁止しています(従前も虚偽広告自体は禁止されていました。)。

 そして、さらに同条2項において、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を阻害しないように、広告の内容及び方法の基準が定められています。   
それは、   

  1. 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。
  2. 誇大な広告をしないこと。
     
  3. 公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。
     
  4. その他医療に関する適切な選択に関し必要な基準として厚生労働省令で定める基準

となっており、比較広告、誇大広告、公序良俗に反する広告を禁止しています。4番目の省令で定める基準について、上記の検討会の省令案では、   

  1. 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく体験談の広告をしてはならないことはならないこと
     
  2. 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと

とされていて、個人体験談による広告の禁止及びいわゆるビフォーアフター広告の禁止が規定されています。

 医療広告ガイドライン案のほうは、さらに具体的に詳しく書かれており、実務的には興味深いところですが、長くなりますので、改めて別の記事にしたいと思います。

【追記】(2/6)

 昨年の医療法改正については、当ブログで書いていますので、興味のある方はご覧下さい。
 → 「医療機関の広告規制強化(医療法改正)」 (2017/6/14)

2018年2月 1日 (木)

浄水器「トレビーノ」カートリッジの個数についての不当表示

 本日、東レ株式会社(東京都中央区)に対して、景品表示法違反の不当表示(有利誤認表示)に関する消費者庁措置命令が出ています。

  → 消費者庁公表資料 (PDF)

 対象表示は、浄水器(トレビーノ)とカートリッジのセット商品の商品パッケージの表示で、浄水器の箱(本体箱)に、交換用カートリッジ3個が入った箱(カートリッジ箱)を接着して販売するセット商品につき、本体箱天面には「カートリッジ1個付」と記載し、カートリッジ箱天面には「カートリッジ4個入り」と記載しており、また、本体箱前面にはカートリッジが装着された浄水器の写真を掲載し、カートリッジ箱前面には「カートリッジ4個入り」と記載していました。

 したがって、消費者が見ると、あたかもセット商品に5個のカートリッジが入っているかのように見えるけれども、実際には、本体箱に1個、カートリッジ箱に3個の合計4個入りだったというものです。

100

 東レは、このカートリッジ箱のフタのフラップ部分に「おちらのパッケージはカートリッジ3個入りです。残りのカートリッジは本体パッケージに1個同梱しております。」と記載していたようですが、消費者庁は、この記載は、上記の表示と同一視野に入る個所に記載されたものではなく、個数に関する一般消費者の認識を打ち消すものではない、としました。

101

                   ※写真はいずれも消費者庁公表資料より

 打ち消し表示については、こちらをご参照ください。

 → 「「打消し表示に関する実態調査報告書」の公表(消費者庁・景表法)」
                         (2017/7/14)

2018年1月26日 (金)

オンラインゲームの「ガチャ」におけるアイテム出現確率に関する不当表示(消費者庁)

 つい先日、ミクシィがスマートフォンゲーム「モンスターストライク」で、また、ガンホー・オンライン・エンターテイメントもスマートフォンゲーム「パズル&ドラゴンズ」で「ガチャ」のアイテムごとの当選確率の表示を始めた、との報道がありました。この背景には、米アップル社が実施したルールの改定があると言われています。

 以前から、ガチャの確率については、表示すべきとの意見が出されていました。課金されているゲームにおいて、ガチャは射幸心をあおって高額の出費につながる問題もあり、また、ゲーム運営業者において恣意的に設定できるガチャの確率を表示しないまま、というのは、景品表示法的にも問題ではないか、というようなところです。

 そして、本日、オンラインゲームのガチャの出現確率の表示に関する不当表示事案が出ました。

 本日、消費者庁は、アワ・パーム・カンパニー・リミテッド(中華人民共和国)に対し、同社のオンラインゲーム 「THE KING OF FIGHTERS ’98 ULTIMATE MATCH Online」に係る表示につき、不当表示(有利誤認)であるとして、措置命令を出しました。

   → 消費者庁公表資料 (PDF)

 これは、上記ゲーム内で使用するキャラクター「クーラ」を提供する「クーラ限定ガチャ」において、ゲーム画面上、「クーラ」の画像とともに、「ガチャでピックアップの格闘家があたる」、「クーラ」、「出現確率:3%」、「購入」並びに「万能破片と格闘家確定」及び「10回購入」と記載していました。

100_2
                           (消費者庁公表資料より)

 これにより、あたかも

  •    本件役務を1回ごとに取引する場合にあっては、本件役務の取引1回当たりの「クーラ」の出現確率が3パーセント
  •    
  • 本件役務を10回分一括して取引する場合にあっては、アイテム「万能破片」の出現に割り当てられる1回を除く9回における本件役務の取引1回当たりの「クーラ」の出現確率が3パーセント

であるかのように表示していましたが、実際には、   

  • 本件役務を1回ごとに取引する場合の本件役務の取引1回当たりの「クーラ」の出現確率は、0.333パーセント
  •    
  • 本件役務を10回分一括して取引する場合のアイテム「万能破片」の出現に割り当てられる1回を除く9回における本件役務の取引1回当たりの「クーラ」の出現確率は、9回のうち8回については0.333パーセント

ということです。  

 つまり、ガチャの確率を表示していたのですが、実際の確率は、表示の約1/9に過ぎなかったという事案です。

 これは、有利誤認とされて当然だと思いますし、確率表示をしないこと自体が有利誤認とされるケースも想定されるのではないかと思います。

【追記】(1/26)

 投稿して、1時間ほどしたら、こんな記事が飛び込んで来ました。

 → 「スクエニ「星のドラゴンクエスト」ガチャ不当表示で集団訴訟に
                1人で90万円以上課金したユーザーも」
 

 こちらは、確率表示がない場合ですかね。ちょっと調べてみて、後日ブログに書こうと思います。

2018年1月19日 (金)

「葛の花由来イソフラボン」機能性表示食品の販売業者9社に対する課徴金納付命令(消費者庁)

 当ブログ「「葛の花イソフラボン」を含む機能性表示食品に対する措置命令(不当表示)」(2017/11/7)でも書きました、昨年11月、景品表示法違反不当表示(優良誤認表示)に対して措置命令が出されていた葛の花イソフラボンの事案について、本日、消費者庁は、本日、販売事業者9社に対し、課徴金納付命令を行いました。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 9社は、株式会社オンライフ(東京都品川区 1167万円)、株式会社協和(東京都福生市 263万円)、株式会社ステップワールド(東京都渋谷区 4893万円)、株式会社テレビショッピング研究所(東京都大田区 689万円)、株式会社Nalelu(東京都江戸川区 775万円)、日本第一製薬株式会社(福岡市博多区 285万円)、株式会社ハーブ健康本舗(福岡市中央区 2073万円)、ピルボックスジャパン株式会社(東京都港区 351万円)株式会社やまちや(京都市下京区 592万円)です(カッコ内金額は課徴金額)。

100_2

 措置命令の対象は16社でしたが、そのうち9社に課徴金納付命令が出されたことになります。他の7社が対象になっていない理由はわかりませんが、既に、ニッセンのように購入者に返金が行われている場合(自主返金による減免制度)や課徴金の売上要件(5000万円)に満たない業者というようなことかと思われます。(※【追記】現時点での共同通信、時事通信の記事では、7社は売上要件で外れた、としてますね。)

 課徴金納付命令の対象行為は、9社は自社サイトや新聞、TV広告、DMなどに、あたかも、対象商品を摂取するだけで、誰でも容易に、内臓脂肪(及び皮下脂肪)の減少による、外見上、身体の変化を認識できるまでの腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていたというものです。これらについて、消費者庁が、9社に対し、それぞれ当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、9社から資料が提出されたが、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった、というものですね(不実証広告制度)。

2018年1月16日 (火)

web雑誌「国民生活」2018/1月号(国民生活センター)

 国民生活センターのweb情報誌「国民生活」の1月号がサイトにアップされています。

   → 「国民生活」(国民生活センター)

 今号の特集は、 「シェアリングエコノミーと消費生活」で、内容は以下の通りです(リンク先はPDF)。   

 その他の記事は以下の通りです。

 消費者問題アラカルト   

 新 インターネットと上手につき合う   

 賃貸住宅の基礎知識-入居から原状回復まで-   

 消費生活相談に役立つ社会心理学   

 海外ニュース   

  • 海外ニュース(2018年1月号)      
            
    • [イギリス]バイナリ-オプション詐欺
    •        
    • [香港]海外でレンタカーを利用する際の注意
    •        
    • [ドイツ]日本製の電子ピアノに高い評価
    •        
    • [オーストリア]バスマティ米(香り米)等のヒ素は基準値内
                    【執筆者】安藤 佳子、岸 葉子

 消費者教育実践事例集   

 明治時代の生活に学ぶ   

 新連載私たちと経済   

 苦情相談   

 暮らしの法律Q&A   

 暮らしの判例   

 誌上法学講座

«「SPORTS AUTHORITY」運営会社に対する措置命令(有利誤認)