2019年11月12日 (火)

「判例から学ぶ消費者法〔第3版〕」(民事法研究会)が発行されました。

 「判例から学ぶ消費者法」の第3版(島川勝・坂東俊矢編)が発行されました。

民事法研究会サイト

 この本の初版から、「情報化社会と消費者」の章を書いており、今回も引き続き担当しています(第19章)。

 担当部分の裁判例2つの中身についてはあまり変わっていませんが、冒頭の「問題の所在」については、第2版(平成25年発行)以降の情報化社会の進展も激しく、それにまつわる事象の変化もありますので、アップデートのために加筆修正を行っています。

 私の担当個所以外でも、集団的被害回復制度の導入消費者契約法や民法(債権法)の改正など大きな動きがあり、それらをカバーする改訂内容となっています。

 本書の内容について、出版社サイトから以下に引用いたします。ご興味のある方は是非ご一読いただければと思います。


本書の特色と狙い

 約款、集団的消費者被害回復制度について新たに章を設け、民法(債権関係)、消費者契約法、特定商取引法、割賦販売法等の改正、消費者裁判手続特例法の立法から最新の重要判例も織り込んで約6年ぶりに改訂!

 訪問販売、クレジット取引、多重債務、金融商品取引、欠陥住宅、ネットオークションなど、消費者問題の各分野について重要な裁判例をもとに、消費者問題の理論と実務を解説!

 各分野の概説とともに、判決の概要・争点・判旨を紹介したうえで、判決の意義や社会に与えた影響などをわかりやすく示す!

 消費者法を学ぶ学生はもとより、消費者相談にあたる消費生活センター関係者、消費者事件を担当している弁護士・司法書士等の実務家にも必携となる1冊!

本書の主要内容

第1章 消費者問題総論

第2章 民法と消費者法

第3章 消費者契約法(1)─不当勧誘規制

第4章 消費者契約法(2)─不当条項規制

第5章 消費者団体訴訟制度

第6章 集団的消費者被害回復制度

第7章 約款と民法、消費者法

第8章 特定商取引法(1)─訪問販売、クーリング・オフ

第9章 特定商取引法(2)─継続的役務

第10章 特定商取引法(3)─マルチ商法とネズミ講

第11章 割賦販売法(1)─平成20年改正法とクレジット取引

第12章 割賦販売法(2)─クレジットカードの不正使用

第13章 多重債務と消費者

第14章 金融商品取引と消費者

第15章 保険と消費者

第16章 製造物責任と消費者

第17章 欠陥住宅と消費者

第18章 独占禁止法・景品表示法と消費者

第19章 情報化社会と消費者

第20章 宗教被害と消費者

第21章 医療サービスと消費者

2019年10月31日 (木)

デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査(公取委)

 本日、公正取引委員会「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引)」を公表しました。

 これは、公正取引委員会、経済産業省、総務省が立ち上げた「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」中間論点整理(平成30年12月12日)を踏まえて策定された「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則」(平成30年12月18日)に基づいて、特に問題点の指摘が多いオンラインモール及びアプリストアにおける取引にかかる独占禁止法・競争政策上問題となるおそれのある取引慣行等の有無を明らかにするために実施されたものです。

 調査の対象は、オンラインモール運営事業者又はアプリストア運営事業者がオンラインモール又はアプリストアを利用して出品する事業者(利用事業者)との間で行う取引です。これに関して、公正取引委員会サイトに設置された情報提供窓口に寄せられた情報(計914件)と、利用事業者や消費者に対するアンケート調査の結果、および、運営事業者8名、利用事業者85名からのヒアリングを行うことにより実態調査が行われました。

 → 公正取引委員会報道発表資料
  (報告書本体および報告書概要のPDFへのリンクがあります。)

 報告書本体は99頁あり、まだちゃんと目を通していませんが、報告書概要のほうは16頁にまとめてあります。


 独占禁止法の基本がわかる人なら、概要を読むだけでも、デジタルプラットフォームに関する現在の競争政策上の問題点が整理されているので、良い資料ではないかと思います。

 特に取引に関するデータの問題について、ネット上では、本来、個人情報保護法の問題であり、公正取引委員会ではなく、個人情報保護委員会の所管ではないか、などといった意見もよく見るのですが、もちろん、個人情報保護法の問題も重なる部分があるのは当然ですが、競争政策上の観点からの規制は個人情報保護委員会の仕事ではありませんし、問題となるデータも、個人情報保護法が対象とする「個人情報」に限りませんので(例えば、BtoBの取引情報は個人情報ではありません。)、報告書に示された個々の考え方の当否は別に検討すべきは当然として、ここで公正取引委員会がこの問題を取り上げていること自体は全く不思議ではないですね。

 参考までに報告書本体の目次構成を以下に示しておきます。

第1部 デジタル市場と競争政策
 第1 経済のデジタル化とデジタル・プラットフォームの浸透
 第2 デジタル・プラットフォームの特徴
  1 両面市場とネットワーク効果
  2 低い限界費用と規模の経済性
  3 デジタル・プラットフォームがもたらす便益
  4 集中化・スイッチングコスト・ロックイン
 第3 デジタル・プラットフォームに関する懸念とその対応
  1 競争政策上の懸念
  2 公正取引委員会の対応
 第4 デジタル・プラットフォームの競争環境の整備
  1 取引条件等の透明化
  2 データの移転・開放

第2部 オンラインモール・アプリストアに係る実態調査
 第1 調査趣旨等
  1 調査対象
  2 調査方法
 第2 市場の概要
  1 オンラインモール市場の概要
  2 アプリストア市場の概要
 第3 運営事業者の取引上の地位
  1 市場における有力な地位
  2 独占・寡占的な地位
  3 優越的地位
  4 運営事業者の取引上の地位に係る利用事業者の認識
 第4 取引実態と評価
  1 取引先に不利益を与え得る行為
  2 競合事業者を排除し得る行為
  3 取引先の事業活動を制限し得る行為
  4 公正性・透明性に欠けるおそれのある行為

第3部 結語
 第1 本実態調査の要点
  1 独占禁止法上の考え方
  2 競争政策上の考え方
 第2 今後の取組

2019年10月17日 (木)

即位の日の休日や来年の祝日のお話

 さて、来週22日は、天皇即位の日ですね。どうやら、台風による被害を考慮して、祝賀パレードは延期になりそうですが、即位自体は予定通りということになります。

 既にご承知のことと思いますが、この22日は休日となっています。カレンダーや手帳によっては、対応していなくて、特に記載のされていないものも多いようですので(私の手帳もそうです。)、お気を付け下さい。

 このあたりを法律的に見ていきますと、「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」が、昨年12月に公布、施行され、即位の日及び即位礼正殿の儀が行われる日が休日となりました。

 この法律の本体はわずか1条だけで、「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日は、休日とする。」というものです(法律のタイトルそのままですね。)。これに附則がいくつか付いていまして、その附則2条2項は、

「本則及び前項の規定により休日となる日は、他の法令(国民の祝日に関する法律を除く。 )の規定の適用(略)については、同法に規定する休日とする。」

となっていて、これにより、この日は、国民の祝日扱いとなります。

 ということは、我々弁護士の仕事に関係が深い、上訴(控訴、上告など)などの訴訟手続の期間の計算についても、国民の祝日扱いとなります。

 つまり、民事訴訟法95条3項「期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(略)に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。」でいう「国民の祝日に関する法律に規定する休日」に該当するわけですね。

 なお、この条文については、以前、当ブログに書きましたので、そちらもご覧下さい。10年以上前になりますが、今でも同じです。

  → 「控訴・上告期間と年末の判決」 (2008/12/23)

 さて、ついでに、祝日に関する話をご紹介しますと、

 まず、来年から、「体育の日」の名称が、「スポーツの日」に変更されます。

 これは、上にも出てきました「国民の祝日に関する法律」が改正され(施行は令和2年1月1日)、従前の「体育の日」の項が、

「スポーツの日 10月の第2月曜日 スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う。」

と書き換えられたためです。

 さらに、本来「スポーツの日」は、ここにあるように10月第2月曜なんですが、来年に限っては、7月24日になります。

 そして、これも来年に限り、「海の日」(本来は、7月第3月曜なので、来年は7月20日になるはずのもの。)も7月23日とされました。

 これは、7月24日東京オリンピックの開会式となる関係で、土日も併せて、7月23日~26日まで4連休にしたものです。

 法律的には、「平成32年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」を改正して、新たに、「第5章 国民の祝日に関する法律の特例」を加え、ここに、

第29条 平成32年の国民の祝日(国民の祝日に関する法律(略)第1条に規定する国民の祝日をいう。)に関する同法の規定の適用については、同法第2条海の日の項中「7月の第3月曜日」とあるのは「7月23日」と、同条山の日の項中「8月11日」とあるのは「8月10日」と、同条体育の日の項中「10月の第2月曜日」とあるのは「7月24日」とする。」(令和になる前にできた法律ですので、平成32年となります。)

という規定を置きました。なお、山の日が移動する8月10日は、閉会式の翌日ですね。

 なお、天皇誕生日も12月23日(本年から)から2月23日(来年は日曜なので翌日が振替休日になります。)に移りますね。

 来年のカレンダーや手帳では既に対応済みとは思いますが、お気を付け下さい。

2019年10月16日 (水)

唐揚げ専門店による産地不当表示(景表法)

消費者庁は、本日、株式会社プラスワン(神戸市兵庫区)に対し、同社が運営する「からあげ専門店こがね」の店舗において、鶏の「もも」と称する部位を使用した唐揚げ及び当該唐揚げを含む商品に係る表示について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)に該当するとして、措置命令を行っています。消費者庁公正取引委員会(公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所)の調査の結果を踏まえたものです。

 → 公正取引委員会報道発表資料

 店舗の看板又は軒先テントの表示に関するもので、例えば、塚本店の看板において、「からあげ専門店 こがね」及び「国産若鶏使用 絶品あげたて」と表示するなどして、あたかも、対象商品には、国産の鶏もも肉を使用しているかのように示す表示をしていたものですが、実際には、全部~一部(3割程度)、ブラジル産の鶏もも肉を使用していたというものです。

 景品表示法違反として消費者庁措置命令を受けたものですが、このような食肉の原産地偽装は、不正競争防止法の対象(誤認惹起行為。同法2条1項20号。)ともなります。景品表示法違反の不当表示行為自体には刑罰はありませんが、不正競争防止法違反行為は刑罰の対象です。

 これまでにも、今回の件と同様に、ブラジル産輸入鶏肉を国産と偽って自治体に対して学校給食用に販売したケースで、不正競争防止法違反で有罪判決を受けたものは複数あります。外国産の鶏や豚を国産と偽ったり、鶏や豚などを混ぜて製造したミンチ肉を牛100%と表示したりしたミートホープ(北海道)事件では、社長に懲役4年の実刑判決が出ています。

 今回の件は店舗での表示であり、学校給食用に偽装し大量に販売するようなケースとは、規模や悪質性などの状況が異なるため、こういった刑事事件に発展するのかどうかはわかりませんが、報道によれば故意にやっていたようですので、形式的には不正競争防止法違反罪に該当するのではないかと思われます。

2019年10月 9日 (水)

限定承認の場合の相続財産管理人の当事者適格

 本日、消費者庁が、整体サロン「カラダファクトリー」を展開する「ファクトリージャパングループ」(東京都千代田区)の整体サービスの割引に関する宣伝が景品表示法違反の不当表示(有利誤認)に当たるとして、同社に措置命令を出しました。初回利用者などに対する割引につき「期間限定」をうたっていたが、期間が過ぎた後も値引きを続けた、というものです。

消費者庁公表資料


 さて、先日受けた相談なのですが、

 相談者には、とある貸付金債権があったが、その債務者が死亡した。債務者にはあまり資産がないためか、法定相続人全員が「限定承認」の手続を家庭裁判所にした。そのため、法定相続人の1人が相続財産管理人に就任した。その債権の回収はなかなか進まないのだが、時効消滅になりそうなので、時効の中断のために、貸金請求訴訟を行いたい。ついては、被告は、法定相続人全員なのか、あるいは、相続財産管理人1人を被告にすればいいのか、という内容でした。

 → 「相続の限定承認」(裁判所サイト)

「限定承認」というのは、それほど多く利用されているわけではなく、民法上も手続が整備されているとはいえないため、実際にはなかなか解釈が難しいことがありますね。

 上の相談に対しては、私の直感的には、相続人全員を被告にする(なお、金銭債権の相続なので、分割債権になります。)ことになると思うけれども、限定承認ではなく相続人不存在の場合であれば、相続財産管理人が被告となるのだから、同様、という考え方もあり得ると思うので、調べますね、ということで、調べました。

 そうすると、今回の相談とは反対の事案、つまり、貸付金の債権者が死亡して、相続人が限定承認をして、債務者に請求訴訟を提起した、という場合の最高裁判決が見つかりました。

 最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決(判タ286-219)ですが、この訴訟は、相続財産管理人が原告本人となって、債務者を被告として訴訟を提起しています。

 原審の仙台高裁秋田支部は、このような場合でも、相続財産に関する権利義務の主体となるのは、共同相続人全員であって、相続財産管理人は一種の法定代理人としての地位に立つ、したがって、共同相続人全員が原告となり、相続財産管理人がその法定代理人として訴訟追行にあたるべきであったが、この訴訟は、相続財産管理人自身が原告となって提起したのだから、当事者適格を欠き不適法であるとして一審の請求認容判決をくつがえして、訴えを却下しました。なお、当事者適格訴訟要件のひとつですが、訴訟要件を欠く場合には、請求の棄却ではなく、訴えの却下、となります。

 そして、この判決に対する上告審である最高裁も原審判決を支持し、相続財産管理人は相続人全員の法定代理人の地位を有するに過ぎず、当事者適格は有しない、として、相続財産管理人(原告、上告人)の上告を棄却しました。

 そうしますと、最初の相談の事案は、当事者が反対とはいえ、理屈は同じことになりますので、債権者は、相続人全員を被告として請求訴訟を提起することになりますが、相続財産管理人がいますので、相続財産管理人を相続人全員の法定代理人として訴訟を提起することになります。なので、訴状の送達など、訴訟の手続自体は相続財産管理人だけを相手にすればよいことになります。

 ということで、私としては、無事に相談に回答できたわけですが、この最高裁判決の事案はおそらく弁護士であれば、違和感があると思います。「なんで、こんなことになったの?」という感じです。相続財産管理人には弁護士が代理人としてついていたようです。

 調べてみると、この一審の地裁では、被告(債務者)は期日に出頭せず答弁書等も提出しなかったため、いわゆる欠席判決として、原告の請求が全て認められる判決が出ているのです。おそらく、被告はそういうことを知らずに放置していたのかもしれません。敗訴判決が送られてきて、びっくりして、今度は弁護士に依頼して、控訴をしたものと想像します。しかし、高裁判決を見る限り、被告の訴訟代理人は、原判決を取り消して請求の棄却の判決を求め、債務について、弁済、代物弁済、免除などがあり、既に債務はなくなっている、という主張をしているようで、当事者適格を欠くので却下、という訴訟要件についての主張はしなかったように読めます。

 民事訴訟では、当事者主義の一場面として、当事者が主張しなかった請求原因を裁判所が勝手に採用して判断することはできません。しかし、訴訟要件に関しては、職権調査事項とされ、当事者の主張がなくても、裁判所が調査し判断することとなっているのです。なので、高裁は、自身で、当事者適格を判断したということになります。

 ただ、理屈はそうなんですが、実際の裁判手続を考えると、おそらく、高裁はどこかの時点で、相続財産管理人当事者適格について気づいて、原告、被告双方にその点の問題を伝えていると思います。そして、双方が当事者適格の有無について、主張を追加して、という流れだと思います。当然ながら、その時点では、この最高裁判決は出ていないのですから、両方の考え方があり得ることになります。いずれにしろ、債権者の代理人弁護士は、一審で簡単に勝っていただけに、この流れは大変だったろうな、と同業者として思います。この事案では実際どうだったのかは、わかりませんが、私の相談のように、時効中断も目的とする訴訟であれば、この訴訟が訴えの却下で終われば、時効が中断しなかったことになり、もし時効期間が経過してしまっていれば、債権は時効消滅してしまったことになるので大変です。かといって、当事者適格の有無についての判断がまだ明確ではない時点で、債権者の代理人としては、どうすれば良かったのか、ということを考えると、結構難しいですね。法律家であれば、「主観的予備的併合」という言葉が浮かびそうです。もっとも、現在では「同時審判申出」制度ができましたので、これを使うことになるのでしょうね(問題点に気づいていれば、の話ですが)。

2019年10月 6日 (日)

消費生活センター、マンション管理組合など昨日記事の補足

 昨日の記事の続きです。

 長野剛記者は論座の記事「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(4ページ目)の中で、各地の消費生活センターについて、「ただ、設置根拠となる消費者安全法では「消費者」は「個人」です。消費者庁の担当者は「マンション管理組合は消費者にはならないと解釈しています」とし、消費生活センターの救済対象ではないとの認識でした。」と書かれています。

 確かに、消費者安全法には、地方自治体の消費生活センターの設置が規定されていますが、この消費生活センターは国の機関や独立行政法人などではなく、あくまでも都道府県市町村が設置する組織です(多くは消費者安全法(平成21年施行)のずっと以前から存在しており、その設置の根拠は地方自治体の条例。)。したがって、名称についても、「消費者生活センター」以外にいろいろあって、たとえば、京阪神でも、大阪府は「消費生活センター」ですが、大阪市は「消費者センター」、兵庫県は「消費生活相談センター」、神戸市は「消費生活センター」、京都府は「消費生活安全センター」、京都市は「消費生活総合センター」になっています。東京都は「消費生活総合センター」ですね。なお、「国民生活センター」という独立行政法人がありますが、これは、「消費生活センター」とは違うもので、元々は50年前に国の特殊法人として設立されており、「独立行政法人国民生活センター法」を設置の根拠とするものです。

 話がそれましたが、消費者安全法消費生活センターについての規定があるのは、上記記事の通りではあるのですが、要するに「消費者安全の確保」に関する相談やあっせんなどの事務を行うというものです。そして、消費者安全法においては、「消費者」は個人であり(団体は除外)、「消費者安全の確保」とは、消費者の消費生活における被害を防止し、その安全を確保すること、となっています。では、マンション管理組合は団体であり個人ではないので、消費生活センターの業務の対象外と言えるのでしょうか。

 法律における「消費者」という用語全般については、1年ほど前に「法律と「消費者」」 (2018/6/30)というのを書きましたが、法律によって表現は違うけれども、基本的に、「消費者」は個人となっています。しかし、消費者契約法では、「消費者契約」の契約締結時の問題とか契約条項の内容についての規制が定められているので、規制が及ぶのは、消費者と事業者との契約関係に限られます(救済裁判例もありますが、省きます。)。したがって、団体であるマンション管理組合と事業者との契約は残念ながら対象外となってしまいます。長野記者が消費者庁の担当者の見解として書いているのは、消費者安全法を含む、こういった法律上の「消費者」の解釈によるものかと思います。

 しかし、消費者安全法は、「消費者契約」のみを対象とするものではなく、例えば、直接の契約関係にはない、商品の製造業者であっても、欠陥商品などによる消費者安全に関する問題については対象となります。そして、居住用のマンションの住民たちそれぞれは、まさしく個人たる「消費者」であり、マンション管理組合が購入、設置した商品を、実質的には自分らの個人財産から代価を支払い、共有物として所有し、利用するわけですので、それによって、住民たちに生ずる損害に関する問題は、消費者安全法の守備範囲です。

 なお、安全という言葉からは、生命や身体の被害が思い浮かびますが、消費者安全法は「消費者事故等」の定義として、それ以外に、「虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を疎外する恐れがある行為であって政令で定めるものが事業者により行われた事態」(同法2条5項3号)も含めています。そして、政令では、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をすること。」(施行令3条1号)となっています。ここでは、広告、表示を直接消費者個人に向けられたものに限られておらず、広告、表示が誇大、虚偽であることに基づいて、消費者の利益を不当に害するものであればよいと考えるべきです。

 しかも、居住用のマンション管理組合は、実態的にみても、個人の塊の非営利団体であって、一般的な流通の中の卸業者とか小売業者のように独立した存在ではありませんから、なおさらだと思います。事業者からの購入も、住民らの総会や理事会の決議で決まるのですから、多数決とはいえ、基本的には、直接それぞれ個人の意思判断にかかるものであり、事業者によるマンション管理組合に対する広告、表示は、実際には住民たる個人に向けられているといえます。

 このように、長野記者が取り上げたマンション管理組合相手のセールスも消費者安全法の対象と考えるべきであり、まぎれもなく消費者問題そのものです。したがって、消費生活センター国民生活センターも、マンション管理組合が個人であることを理由に取り上げないのは疑問です。

 ただ、取り上げられた問題は、科学的・技術的な性能を謳う高額商品ですので、各地域の消費生活センターが判断することは難しいといえます。ただでさえ、予算や人員が減らされて疲弊しており、商品テストの人材、設備がない所がほとんどで、相談員などの職員の皆さんはその中で頑張っておられます。

 となると、やはり国民生活センターや製品評価技術機構(nite)といった国の機関(独立行政法人)で何とか当該商品のテストができないものかな、と思います。

 なお、最後に付け加えると、前にもちょこっと書いたように、独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の中の「欺まん的顧客誘引」に該当するのであれば、公正取引委員会が乗り出せるのではないか、と思っています。
 また、民事的には、住民やマンション管理組合から以外に、同業者などの関係業者が、不正競争防止法誤認惹起行為(同法2条1項20号)に基づく請求を行うということも考えうるところです。

2019年10月 5日 (土)

「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(論座の記事)

 先日、「パイプテクター」なる商品について取り上げました。

 → 「赤さび防止効果に関する日本技術士会千葉県支部の見解書」8/20

 → 「NMRパイプテクターはどうかな♡の話。続編。」9/3

 この中に紹介した山本一郎氏の「謎水事件」日本システム企画社のNMRパイプテクター事案が熱い!」もよく読まれたようですが、本日になって、朝日新聞「論座」サイトに、

 「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々 ネット注目の#謎水装置 開発者を直撃」

という朝日新聞長野剛記者による記事が掲載されました。

 当該業者の社長を含め、いろいろと関係者に取材されている記事ですので、是非読まれることをお勧めします。

 

 

 「実は対応可能な消費者行政」以下の内容に関連して、もう少し書いておきたいことはあるのですが、長くなりますので、また別稿にて。

2019年10月 4日 (金)

エディオン事件の公取委審決(独禁法)

 9月末で、これまで使っていたブログの背景デザインが使えなくなったようで変わってしまいました。他のに設定しようとしたんですが、まだうまくいきませんね(反映するのに時間がかかってるのかな。)。おいおい対応していこうと思います。こっちのほうがシンプルでいいかもしれませんね。
【追記】変更できました。しばらくはこれで行きます。


 さて、ラグビーW杯の盛り上がりと関西電力の騒動の中、本日は、独占禁止法優越的地位の濫用に関する措置命令課徴金納付命令を家電量販大手のエディオンが争っていた件について、公正取引委員会の審決が出ました。結論は、排除措置命令を変更、課徴金納付命令の一部を取り消す、というものです。

 → 公取委報道発表資料

 審決書の本文(PDF)は見てませんが、優越的地位濫用の対象とされていた取引相手127社のうち、35社に対しては、優越性が認められないとして、また、契約に定められていた割戻金の一種については、課徴金の算定の基準となる購入額から控除すべきとした、ものです。その結果、課徴金については、約40億円から約30億円へと、約10億円が減額されています。

2019年9月25日 (水)

プラットフォームと消費者個人情報提供に関する独禁法ガイドライン案

 正式には「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」(以下、単に「ガイドライン案」)となりますが、現在、公正取引委員会が意見募集(パブコメ)中です(9/30締切)。

 実は、昨夜も某消費者団体の会議で話題になりましたので、ガイドライン案について、独占禁止法優越的地位濫用規制に詳しくない一般の方向けの簡単な解説です。概説ですし、重要な注記も略していますので、内容を正確に詳しく検討されたい方は上にリンクした公正取引委員会サイトからガイドライン案をご覧下さい。
 なお、優越的地位の濫用というのは、独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の一つで、これに該当する行為を行った事業者は、公正取引委員会から、排除措置命令課徴金納付命令を受ける場合があります。

 まず、ガイドライン案は、「はじめに」として、いわゆるデジタル・プラットフォーマー(以下、単に「プラットフォーマー」)がイノベーションの担い手となり、事業者にとっては市場へのアクセスの可能性を飛躍的に高め、消費者にとっては便益向上につながるなど、我が国の経済や社会にとって重要な存在となっている、とし、一方で、 個人情報等の取得・利用と引換えにサービスなどを無料提供するというビジネスモデルが採られることがあるため、プラットフォーマーがサービスを提供する際に消費者の個人情報等を取得・利用することに対して懸念する声もある、としています。そして、プラットフォーマーが不公正な手段により個人情報等を取得などすることによって消費者に不利益を与えるとともに、独占禁止法上の問題が生じる、と指摘しています。
 そのため、独占禁止法の運用における透明性、プラットフォーマーの予見可能性を向上させる観点からこの問題において、どのような行為が優越的地位の濫用として問題となるかについて整理したのがガイドライン案、ということです。
 したがって、今回の意見募集は、消費者の個人情報等をプラットフォーマーに提供させる行為が優越的地位濫用に該当するのか、という観点から整理されたものですので、独占禁止法改正や新たな立法などによる新しい規制強化についてのものではありません。

 そして、「1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方」として、 まず、事業者と消費者との取引においては、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすいことを指摘し、消費者に優越しているプラットフォーマーが消費者に対して、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、消費者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害する一方、プラットフォーマーはその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり、このような行為は優越的地位の濫用として規制される、として、プラットフォーマーが消費者の個人情報等の提供を受ける行為も優越的地位の濫用の規制対象となり得ると、しました。そして、以下で、優越的地位の濫用の要件ごとに整理しています。

 まず、「2 「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方」において、個人情報等はプラットフォーマーの事業活動に利用され経済的価値を有することから、消費者がプラットフォーマーが提供するサービスを利用する際、対価として個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はプラットフォーマー「取引の相手方(取引する相手方)」に該当することを明確にしました。

 そして、「3 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方」において、プラットフォーマーが消費者に対して優越的地位にあるとは、消費者がプラットフォーマーから不利益な取扱いを受けても、消費者がプラットフォーマーのサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合である、としました。
 消費者がプラットフォーマーのサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合であるかの判断については、消費者の「取引することの必要性」を考慮することとし、
①消費者にとって、代替可能なサービスが存在しない場合
②代替可能なサービスが存在していたとしてもプラットフォーマーのサービスの利用を止めることが事実上困難な場合
プラットフォーマーが、その意思で、ある程度自由に、価格、品質その他の取引条件を左右することができる地位にある場合には、通常、プラットフォーマーは取引上の地位が優越していると認められる
とし、優越的地位にあるプラットフォーマーが消費者に対して不当に不利益を課して取引を行えば、通常、「利用して」行われた行為であると認められる、としました。 そして、これらの判断に当たっては、両者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することを考慮する必要がある、としています。

 さらに、「4 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方」において、この要件は、公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものであるとしたうえで、「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいうのであって、現に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならない、としています。

 ガイドライン案は、以上のような優越的地位の濫用の要件ごとの整理をしたうえで、プラットフォーマーによる個人情報等の取得などにおけるどのような行為が優越的地位の濫用に該当するのかについての考え方を明らかにするために、「5 優越的地位の濫用となる行為類型」として、以下の類型を示しています。ただし、これらに限定されるものではなく、また、他の法令に違反しない場合であっても優越的地位の濫用として問題となり得ることも指摘されています。 なお、ガイドライン案では、「個人情報」と「個人情報等」を意識して書き分けていますが、本記事では、そこの区別には言及しませんので、ご注意ください。

⑴ 個人情報等の不当な取得
ア 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。
【想定例①】
 
プラットフォーマーが、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者に個人情報を提供させた(※注記略)。

イ 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること。
【想定例②】
 プラットフォーマー
が、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を「商品の販売」と特定し消費者に示していたところ、商品の販売に必要な範囲を超えて、消費者の性別・職業に関する情報を、消費者の同意を得ることなく提供させた(※注記略)。

ウ 個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を取得すること。
【想定例③】
 プラットフォーマー
が、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を提供させた。

エ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対し、消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に、個人情報等の経済上の利益を提供させること。
【想定例④】
 プラットフォーマー
が、提供するサービスを継続して利用する消費者から対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報等を提供させた(※注記略)。

⑵ 個人情報等の不当な利用
ア 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を利用すること。
【想定例⑤】
 プラットフォーマー
が、利用目的を「商品の販売」と特定し、当該利用目的を消費者に示して取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく「ターゲッティング広告」に利用した(※注記略)。

【想定例⑥】
 プラットフォーマー
が、サービスを利用する消費者から取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく第三者に提供した(※注記略)。

イ 個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を利用すること。
【想定例⑦】
 プラットフォーマー
が、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を利用した。

2019年9月24日 (火)

平成31年5月付け報告書(経産省)

 元号も令和になってから、5ヶ月が過ぎようとしていますが、いまだに慣れないで困ります(私だけかもしれませんが)。

 ところで、経済産業省が、毎年行っている電子商取引に関する市場調査の報告書があります。最新版は、 「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」という名前になってい、今年の5月16日付で、経済産業省サイトに公表されています。なお、報告書本体のPDFファイルは、こちらです。

 ところが、この報告書の表紙の日付が、「平成31年5月」となっています。平成31年は4月で終わり、5月1日からは令和元年のはずですよね。

 改元にあたって、国の省庁などが使用する年表示については、今年4月1日付の「改元に伴う元号による年表示の取扱いについて」(新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議申合せ)というのがあって(PDFはこちら) 、これに従うこととなっています。

 これを見ても、上記の報告書は令和元年とすべきではないか、と思うのです(私のほうが間違ってたら、ご指摘ください。)。ただし、仮にもしミスだとしても、私としては、ここで細かい形式的なミスをつつく気は全然ありません。

 ただ、実際に困ったのは、私はインターネット取引関係の記事などを書いたりすることも多く、上記報告書を引用等する原稿が2つばかりありました。それで、報告書を紹介するときに、元のまま「平成31年5月」とするのか、おそらく正しいと思われる「令和元年」として書くのか、思い切って「2019年5月」としてしまうのか、大いに悩んでしまいました。原稿の内容で悩むのは仕方ないとしても、こういう形式的なことで悩むのは時間の無駄でしかありません。

 しかし、「平成31年5月」とそのまま書くと、なんだか読者にこちらが間違えたように思われるかもしれないし、もし、後で経済産業省が訂正したら、ますますこちらのミスみたいなので、大変シャクだし、勝手に令和西暦に書き換えるのも抵抗があるし、かといって、上の様な注釈を書き連ねるわけにもいきません。なので、結局は、それぞれ校正の段階で編集者に説明をして、具体的にはお任せいたしました。上記以外の方策としては、報告書タイトルのところに書かずに、令和元年5月(又は2019年5月)に出された「・・・・・・報告書」と分離してしまうという方法も提案しておきました。

 なお、結局、どうなったかは、まだ最終的に発行されていませんので、よくわからないのですが。

 もっとも、そのうち、経済産業省のほうで報告書の表紙を訂正するかもしれません。その際は悪しからず、です。

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