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2017年11月19日 (日)

AirbnbとAmazonの排他的取引の報道(独占禁止法)

 独占禁止法に関連する米系企業の2つのニュースが続けて流れてきました。

 1つは、いわゆる「民泊」の世界最大の紹介サイトを運営しているアメリカのIT企業「Airbnb」(エアビーアンドビー)が、民泊を行う国内の業者に対し、他の民泊紹介サイトに情報を掲載しないよう求めていたとして、公正取引委員会が、独占禁止法違反の疑いで、10月に日本法人Airbnb Japan(東京都)に立入検査をしていたことがわかった、というものです。

 もう1つは、インターネット通販大手のAmazonが自社の人工知能(AI)スピーカー「Amazon Echo」(アマゾン エコー)を国内発表した11月8日以降、競合するLINEのAIスピーカー「clova wave」(クローバ ウェーブ)のAmazon内での販売を禁止したことがわかった、というものです。LINEAmazon内に正式サイトを出店していて、このclova waveも販売していたのですが、Amazonの商品一覧から削除されたとのこと。

 Airbnbの事案は、取引先である民泊業者に対して、ライバル業者と取引するな、という形であるのに対して、Amazonの事案は第三者への圧力ではなく、自社の通販サイトでの販売をできなくさせた、という形で、少し異なりますが、市場において強い支配力を持つ企業が、ライバル業者の事業を妨害する結果となる点では似ています。

 Airbnbの事案については、公正取引委員会が立入検査を行ったのは、各社の報道では同社も認めているということですが、公正取引委員会は現段階では何らの公表を行っていないので、どういった疑いで調べているのかは明らかではありません。

 公正取引委員会の流通・取引慣行ガイドラインでは、

市場における有力な事業者が,例えば次のように,取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為取引先事業者に自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者との取引を拒絶させる行為取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者の商品と競争関係にある商品の取扱いを制限するよう拘束する条件を付けて取引する行為を行うことにより,市場閉鎖効果が生じる場合には,当該行為は不公正な取引方法に該当し,違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶),11項(排他条件付取引)又は12項(拘束条件付取引))。」

とされています。

 Amazonの事案は、上記の通り、取引先事業者に対する行為ではないので、Airbnbの事案とは異なります。また、こちらは、現時点で公正取引委員会が動いたとかの事案ではありませんし、Amazonがどのような規制をかけたのかが明らかではありませんが、産経新聞の記事では、舟田政之立教大名誉教授が、独禁法違反の可能性もある、というコメントが出されていますね。   
 こちらのほうは、私的独占とか単独の取引拒絶(ボイコット)などが思い浮かぶのですが、AIスピーカーという新しい商品分野に関して、Amazonが後発で発売している状況であり、しかも、LINEは自社サイトを含め他の流通ルートでの販売は可能ですので、そこらあたりをどう考えるかでしょうか。   
 なお、Amazonによる販売禁止商品に関しては、Apple TVAmazonで販売ができない状態が続いているようです(最近、和解したとかのようですが。)。

2017年11月17日 (金)

ジャパンライフに3回目の業務停止命令(特定商取引法・消費者庁)

 本日、消費者庁は、ジャパンライフ株式会社(東京都千代田区)に対して、特定商取引法違反行為があったとして、平成29年11月18日から平成30年11月17日までの12か月間、業務提供誘引販売取引      
に係る取引の一部(新規勧誘、申込受付及び契約締結)
を停止するよう命じました。

 今回、認定された違反行為は、勧誘目的等不明示、故意による事実不告知、契約書面不交付及び迷惑解除妨害ということです。詳しい違反行為の内容は消費者庁のプレスリリースをご覧ください。

  → 消費者庁公表資料 (PDF)

 ジャパンライフは磁石を埋め込んだベルトなど磁気治療器の預託商法などを展開する会社であり、特定商取引法、特定商品預託法に基づいて、昨年(平成28年)12月16日に3ヶ月、本年3月16日に9ヶ月の、勧誘、申込受付及び契約締結についての業務停止命令を受けており、1年の間に3回目の業務停止命令を受けたということになります。

 以下は、過去2回の業務停止命令についての消費者庁のプレスリリースです。

  → 1回目 消費者庁公表資料 (PDF)

  → 2回目 消費者庁公表資料 (PDF)

 1回目(3ヶ月)も2回目(9ヶ月)も業務停止命令の対象となったのは、

 預託等取引契約に関する業務の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)      
 訪問販売に関する業務の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)      
 連鎖販売取引に関する取引の一部(勧誘,申込受付及び契約締結)

でした。2回目の業務停止命令については、本年12月16日までですので、現在も停止期間中です。

 今回は、特定商取引法で定める「業務提供誘引販売」の取引の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)が対象となっています。

 「業務提供誘引販売」というのは、いわゆるモニター商法や内職商法などがその典型で、ちょっと難しいのですが、その要件は、特定商取引法51条によれば、

(1)「業務提供利益」を収受しうることをもって顧客を誘引し、      
(2)「特定負担」を伴う、      
(3)「商品の販売もしくはそのあっせん、または役務の提供もしくはそのあっせんに係る取引」

となっています。   
概要はこちらを参照ください。 → 業務提供誘引販売取引|特定商取引法ガイド

 なお、以前このブログでもご紹介しましたが、ドロップシッピング業者の行為がこれにあたるとした判決を私も所属していた弁護団でとったことがあります。

  → 「悪質ドロップシッピング業者に対する勝訴判決(大阪地裁)」 (2011/3/25)

 ジャパンライフは、2回も業務停止命令を受けて、その取引の悪質性が指摘されていたにもかかわらず、それを改めることなく、違法な勧誘行為を続けていたわけです。もちろん、今回の1年間の業務停止命令は同社の経営に大きな影響を与えるものと思われます。

【追記】(11/17)

 どうやら2回目の業務停止命令を受けたので、3月以降に、新しく業務提供誘引販売取引を開始したようですね。

 高齢者などに装着タイプ磁気治療器を販売する際に、商品の拡販や宣伝活動を条件に、販売価格の6%の金額を毎年支払うという契約を締結していたとのことです。

2017年11月13日 (月)

中古車走行距離の不当表示に対する長野県の措置命令

 この土曜、日曜に開催された情報ネットワーク法学会研究大会(第17回、於:名古屋大学)に行ってきました。例年通り、盛りだくさんのテーマでしたが、情報法関連の最先端の報告、議論に触れることができました。


 さて、11月10日、長野県は、中古車販売業「サミット」を経営する有限会社ヴィアン(長野県安曇野市)に対して、景品表示法に基づく措置命令を行っています。 

 これは、ヴィアンが、中古自動車の取引に関して、中古自動車のサイトや中古自動車情報誌に、同社の中古自動車情報を表示掲載していましたが、その走行距離等の表示内容について、実際のものよりも著しく優良である示すことにより、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示(優良誤認表示)をしていた、というものです。

 → 長野県県民文化部プレスリリース

 長野県による景品表示法措置命令は今回が初めてです。   
 都道府県による措置命令は、景品表示法の改正により、平成26年12月以降、行うことができるようになったもので、既に3年近く経過していますが、この間、実際に措置命令が出されたのは、わずかであり、今回の長野県措置命令で全国で9件目(7道県)ということになります。

 東京都のように景品表示法や条例に基づいて、多数の改善の指示を出しているところもありますので、措置命令の数だけで単純にはいえません。しかし、景品表示法が改正されて、せっかく措置命令の権限を与えられたのに、いまだに多くの都府県で1回も行使されていないようでは意味がないですね。

 ご参考までに、これまでの8件について、下に並べておきます(新しい事案順)。
 詳しい内容は、各都道府県のサイトなどにありますので、検索してみてください。

 なお、当ブログで扱ったものについては、記事のリンクも付けていますので、興味のある方はご覧ください。                     

福岡県 賃貸住宅 おとり広告 2017/8/30
北海道 食品原材料 優良誤認 2017/8/22
静岡県 シルク衣料 優良誤認 2017/8/8
静岡県 シルク衣料 優良誤認 2017/8/8
静岡県 桜エビ 優良誤認 2017/3/30
広島県 小顔矯正 優良誤認 2016/3/9
岐阜県 牛肉(産地) 優良誤認 2016/2/3
埼玉県 中古車(修復歴) 優良誤認 2015/12/25

          ※3,4は同時に2社が対象となったもの

(当ブログ記事)   
  6について   
   → 「「小顔矯正」の宣伝表示を不当表示とした広島県の措置命令(他1件)」

  8について   
   → 「都道府県初の景品表示法に基づく措置命令(埼玉県)」

2017年11月 7日 (火)

「葛の花イソフラボン」を含む機能性表示食品に対する措置命令(不当表示)

 当ブログで今年8月6日に書きました記事機能性表示食品「葛の花イソフラボン」の不当表示調査の報道」で、消費者庁が調査を行っていることをご紹介した葛の花由来イソフラボンを含む機能性表示食品について、本日、措置命令が出されました。 

 これは、葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の販売事業者16社に対して、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)が認められたとして、出されたものです。

 対象となったのは以下の16社です。

株式会社太田胃散(東京都文京区)、 株式会社オンライフ(東京都品川区)、 株式会社CDグローバル(東京都豊島区)、 株式会社全日本通教(東京都杉並区)、 ありがとう通販株式会社(神戸市中央区)、 株式会社ECスタジオ(東京都千代田区)、 株式会社協和(東京都福生市)、 株式会社スギ薬局(愛知県安城市)、 株式会社ステップワールド(東京都渋谷区)、 株式会社テレビショッピング研究所(東京都大田区)、 株式会社Nalelu(東京都江戸川区)、 株式会社ニッセン(京都市南区)、 日本第一製薬株式会社(福岡市博多区)

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 対象となった表示は自社webサイトや新聞、雑誌、テレビ広告などの表示で、16社は、それぞれ、あたかも、対象商品を摂取するだけで、誰でも容易に、内臓脂肪(及び皮下脂肪)の減少による、外見上、身体の変化を認識できるまでの腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。しかし、消費者庁景品表示法の規定(不実証広告)に基づき、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたが、提出された資料はいずれも当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められませんでした。

 また、注文数量に係る表示に関しても、1社(CDグローバル)は、自社webサイトやSNSにおいて、あたかも、商品の販売数量に関する具体的な予想を立て、当該予想販売数量を上回るほどの相当程度多数の注文を受けているかのように示す表示をしていましたが、実際には、具体的な数値予想を立てておらず、期間中における注文数は僅少であった、というものです。

 なお、今回の措置命令には、「その他」として、内11社が、対象商品の内容について、実際のものよりも著しく優良であると示す表示をしていた事実を、日刊新聞紙2紙に掲載したこと、内1社(ニッセン)は、対象商品の販売を終了し、全購入者に対して実際のものよりも著しく優良であると示す表示をしていた事実を通知するとともに、購入額の全額返金の措置を講じたことが記載されています。

 おそらく、本件に関しては、引き続いて、課徴金納付命令が出されることが予想されます。

【追記】(11/8)

 今回の商品は、別の製薬会社がOEM供給していたもののようですが、場合によっては、上記の販売会社らとの間で紛争が生じる可能性もあります。
 それについては、他の景表法事案での当ブログの別記事でも書いてますので、リンクしておきます。

 → 「景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任」(2016/3/25)

 また、今回の葛の花由来イソフラボンに関しては、今年9月に、もうひとつ別の記事を書いていましたので、それもリンクしておきます。

 → 「健康食品の痩身効果表示に対する消費者庁の処分に関する2題」 (9/29)

2017年11月 2日 (木)

第三者の比較サイトと見せかけた広告などが不当表示とされた事案(ステマ)

 消費者庁は、本日、株式会社ARS及び株式会社リュウセン(いずれも東京都台東区)に対し、両社の「日常生活における各種トラブルを解決するための役務」に係る表示について、景品表示法違反の不当表示(優良誤認)が認められたとして、措置命令を行っています。

  → 消費者庁公表資料 (PDF)

 これは、一般家庭など向けに電気や水道、鍵などのトラブルに関する生活関連サービスを事業としている両社が、自社のwebサイトの他に、自社とは無関係の事業者が運営するものであるかのように装ったwebサイトにおいて、サービス拠点の数や、従来の実績件数、テレビの取材件数などを過大に表示したり、根拠なく、「最大手」、「業界No.1」、「日本一」等の表示を行っていたものです。

 こういった生活サービス業者の広告表示についての不当表示措置命令が出されたのは珍しいですし、本件は自社サイトでの宣伝表示と共に、実際には自社が運営していて、表示内容を自ら決定しているにもかかわらず、見かけは自社とは無関係のサービス業者比較webサイトでの表示についての措置命令というのも珍しいですね。第三者の客観的なサービス内容の比較サイトであると見せかけて、消費者に対して自社が優良なサービスを提供しているかのごとく誤認させるもので、一種のステルスマーケティングであり、悪質な宣伝だと思います。

2017年10月24日 (火)

ベネッセ個人情報流出事件 最高裁が差し戻し判決

 ベネッセの個人情報流出事件に関して、自分の個人情報が流出したとして、ベネッセに対し、損害賠償を求めた事件について、昨日(10/23)最高裁で判決がありました。

 判決内容は、請求を棄却した大阪高裁判決を取り消して、高裁に差し戻す、というものでした。
 最高裁は、 「原審は,上記のプライバシーの侵害による上告人の精神的損害の有無及びその程度等について十分に審理することなく,不快感等を超える損害の発生についての主張,立証がされていないということのみから直ちに上告人の請求を棄却すべきものとしたものである。そうすると,原審の判断には,不法行為における損害に関する法令の解釈適用を誤った結果,上記の点について審理を尽くさなかった違法があるといわざるを得ない。 」 としました。
 これは、不快感や不安を超える損害がなければ損害とならない、とした高裁の判断を誤り、として、損害について審理をやりなおすように命じたものです。

 → 判決文(裁判所サイト)

 従前、個人情報大量流出事件についての被害者らからの損害賠償請求の事件として有名なのは、次の3事件です。   
 これらの事件は、いずれも、個人情報保護法施行以前に起こった情報流出に関するものです。なお、個人情報保護法自体には、情報流出についての損害賠償責任などの民事的責任が定められた規定はありません。したがって、こういった場合、通常は、民法上の不法行為、もしくは債務不履行責任の問題になります。

 ◎宇治市住民基本台帳データ流出事件
    京都地裁 13.2.23.(慰謝料1万、弁護士費用5千円)
    大阪高裁 13.12.25.(控訴棄却)
    最高裁 14.7.11.(上告不受理)

 ◎TBC事件
    東京地裁 19.2.8.
      (慰謝料1万7千円(1名)、3万円(13名)、弁護士費用5千円)
    東京高裁 19.8.28.(控訴棄却)
 ◎ヤフーBB情報漏洩事件
    大阪地裁 18.5.19.(慰謝料5千円、弁護士費用1千円)
    大阪高裁 19.6.21.(地裁判決から既払500円を減額)
    最高裁 19.12.14.(双方からの、上告棄却 上告不受理)

 この内、最後のヤフーBB事件は、私も弁護団に所属していましたので、当ブログにも判決に関していくつかの記事を書いています。高裁判決の時の記事をリンクしておきます。そこから、いくつかの記事にリンクしてますので、興味のある方はお読みください。

   → 「ヤフーBB個人情報漏洩事件控訴審判決(大阪高裁)」 (2007/6/21)

2017年10月19日 (木)

病人向け特別用途食品の不当表示に対する措置命令(消費者庁)

 健康増進法で定められた特別用途食品の表示について、初めての景品表示法違反に基づく措置命令が出ました。

 特別用途食品というのは、乳児、幼児、妊産婦、病者などの発育、健康の保持・回復などに適するという特別の用途について表示するもので、特別用途食品として食品を販売するには、その表示について国の許可を受ける必要があります。

 本日、消費者庁は、キッセイ薬品工業(長野県松本市)の販売する特別用途食品「げんたそうめん」「げんたうどん」の包装表示について、不当表示(優良誤認表示)であるとして、措置命令を行っています。病人向けの低たんぱく質の特別用途食品不当表示です。

 これは、 「げんたそうめん」の包装において、栄養成分表示のたんぱく質量として、100グラム当たり「2.8g」と記載した上で、健康増進法に規定する特別用途表示の許可証票を記載するとともに、「消費者庁許可特別用途食品 病者用 低たんぱく質食品 腎不全患者用」、「げんたそうめんは、たんぱく質や電解質の制限を必要とする腎不全患者などに適しています」と記載して、当該商品が特別用途食品として消費者庁長官の許可の要件を満たしたものであるかのように表示していました。

 また、「げんたうどん」の包装において、栄養成分表示のたんぱく質量として、100グラム当たり「1.9g」と記載した上で、許可証票を記載するとともに、「消費者庁許可特別用途食品 病者用 低たんぱく質食品 腎不全患者用」、「げんたうどんは、たんぱく質や電解質の制限を必要とする腎不全患者などに適しています」と記載して当該商品が特別用途食品として消費者庁長官の許可の要件を満たしたものであるかのように表示していました。

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 しかし、実際には、「げんたそうめん」については、包装後の製品における栄養成分であるたんぱく質量の規格値の基準を満たすための品質検査の管理が行われておらず、37ロット中25ロットの商品において、規格値を0.1グラムないし0.4グラム上回っており、特別用途食品として消費者庁長官の許可の要件を満たしていないものでした。

 また、「げんたうどん」のほうも、規格値の基準を満たすための品質検査の管理が行われておらず、30ロット中12ロットの商品において、規格値を0.1グラムないし0.2グラム上回っており、特別用途食品として消費者庁長官の許可の要件を満たしていないものでした。

2017年10月11日 (水)

アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(東京弁護士会)

 本日夕方、アディーレ法律事務所に対する東京弁護士会の懲戒処分のニュースが入ってきました。弁護士法人アディーレ法律事務所に業務停止2ヶ月、元代表の石丸弁護士に業務停止3ヶ月というものです。

  → 東京弁護士会会長声明 (公表文本文へのリンクもあります。)

 懲戒の対象となった行為は、昨年(平成28年)2月の消費者庁から出された景品表示法違反措置命令の対象行為(不当表示)です。

 これは、いわゆる有利誤認表示で、不当な二重価格表示に関するものです。

  → 消費者庁公表資料 (PDF)

 簡単に言うと、平成22年10月から平成27年8月までの約5年間にわたり、同事務所のwebサイトにおいて、事件の着手金を値引き、あるいは、無料とするキャンペーンを1ヶ月程度の期間限定と称して行っていたというものです。つまり、ずっと、値引きや無料であるのに、あたかも期間限定で、今ならお得、的な広告をしていたものです。

 したがって、同事務所が積極的に行っているテレビや電車内などの広告に対する懲戒ではありません。ツイッターなどを見ると、誤解している人も多いので念のため。ただし、業務停止期間中は、こういったテレビ広告などを含めた業務はできませんので、テレビCMの穴をどう埋めるのかな、と要らぬ心配もしております。

 なお、当ブログでは、景品表示法違反の消費者庁措置命令の事案は、ほとんど記事にしているのですが、上記のアディーレ法律事務所に対する措置命令の時は、ちょうどブログ更新を長らく怠っていた期間だったので、独立した記事は書いてませんでした。後で、他の事案の時に何度か言及をしていますけども。   

2017年9月29日 (金)

健康食品の痩身効果表示に対する消費者庁の処分に関する2題

 消費者庁は、本日、ティーライフ株式会社(静岡県島田市)に対し、同社の「ダイエットプーアール茶」に係る表示が景品表示法に違反する優良誤認表示であるとして、措置命令を行っています。

 自社webサイトにおいて、あたかも、普段の食生活における飲料を対象商品に替えることにより、対象商品に含まれる成分による痩身効果の促進作用が容易に得られるかのように示す表示をしていたものですが、不実証広告制度(景品表示法7条2項)に基づき、消費者庁から裏付け資料の提出を求められたが、合理的な根拠を示すものと認められる資料は提出されなかった、というものです。


 ところで、健康食品の痩身効果の表示といえば、本年8月6日付当ブログ記事で、葛の花由来イソフラボンを含む機能性表示食品の痩身(ダイエット)効果の表示について、消費者庁景品表示法違反ではないかと調査しているという通販新聞の記事を紹介しました。

 → 「機能性表示食品「葛の花イソフラボン」の不当表示調査の報道」 (8/6)

 そして、この件に関し、昨日(9/28)付の通販新聞「機能性表示食品 「葛の花」に措置命令へ 新制度で初、処分10社前後か」という続報記事を出しています。

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 これによれば、消費者庁が10月中にも景品表示法に基づく措置命令および課徴金納付命令を下す方針であり、対象は10社前後にのぼる模様である、とのこと。

 事案の詳しい内容は、上記の当ブログの以前の記事と今回の通販新聞記事をお読みいただきたいですが、単なる健康食品ではなく、機能性表示食品の表示に関するケースということで、10月中にも出されると見られる処分が注目されます。また、記事中にもありますが、葛の花イソフラボンの供給元である東洋新薬についての対応もポイントですね。

2017年9月19日 (火)

SNSアカウントなりすまし行為に対する損害賠償訴訟判決(大阪地裁)

 裁判所webサイトの裁判例情報に出ていた判決に「インターネット上の掲示板において,他人の顔写真やアカウント名を利用して他人になりすまし,第三者に対する中傷等を行ったことについて,名誉権及び肖像権の侵害が認められた事例」(平成29年8月30日判決 大阪地裁平成29年(ワ)第1649号 損害賠償請求事件)というのがありました。

 → 裁判所webサイトの判決本文(PDF)はこちらから

 事案を簡単に紹介しますと、あるSNSサービスにおいて、被告が、原告と同じアカウント名を設定したうえ、プロフィール画像に原告の顔写真を使用して、なりすまし行為を行ったうえで、他者に対する誹謗中傷、差別表現の投稿を多数行ったというもので、これに対して、原告が、名誉権,プライバシー権,肖像権及びアイデンティティ権を侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づき,慰謝料,発信者情報開示費用及び弁護士費用の合計である損害賠償金723万6000円及び遅延損害金の請求を行った、という訴訟です。請求金額の内訳は、慰謝料600万円、発信者情報開示費用(開示手続の弁護士費用)58万6千円、本件訴訟弁護士費用65万円となっています。

 結論から言うと、大阪地裁は、被告に対して、損害賠償として130万6千円(慰謝料60万円、発信者情報開示費用58万6千円、弁護士費用12万円)と遅延損害金の支払を命じています。

 裁判所の判断の詳細は、上記リンク先から判決本文を見ていただきたいのですが、原告が本件の請求の根拠としている名誉権、プライバシー権、肖像権、アイデンティティ権についての判断を見ますと、まず、「第三者に対し、原告が他者を根拠なく侮辱や罵倒して本件掲示板の場を乱す人間であるかのような誤解を与えるものであるといえる」として、名誉権の侵害は肯定されています。

 次にプライバシー権ですが、原告の主張はプロフィール画像を原告の顔写真にして公開したことがプライバシー権侵害であるというものであるところ、この顔写真は原告によって自らのプロフィール画像として公開されていたものであるから、「原告の顔写真は、原告によって第三者がアクセス可能な公的領域に置かれていたと認めるのが相当であり、他人に知られたくない私生活上の事実や情報に該当するということはできない。」として、プライバシー権によって保護するものではない、と否定されました。

 肖像権については、最高裁判例を引用して、「他人の肖像の使用が違法となるかどうかは、使用の目的、被侵害利益の程度や侵害行為の態様等を総合考慮して、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかを判断して決すべきである」としたうえで、「被告は、原告の顔写真を本件アカウントのプロフィール画像として使用し、原告の社会的評価を低下させるような投稿を行ったことが認められ、被告による原告の肖像の使用について、その目的に正当性を認めることはできない」「(投稿内容は)原告を侮辱し,原告の肖像権に結びつけられた利益のうち名誉感情に関する利益を侵害したと認めるのが相当である。」として、権利侵害を認めています。

 最後にアイデンティティ権ですが、原告の主張は、憲法13条後段の幸福追求権又は人格権から、他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権が存在するとして、本件のなりすまし投稿行為は原告のアイデンティティ権を侵害したというものです。   
 今回の大阪地裁判決では、「個人が,自己同一性を保持することは人格的生存の前提となる行為であり,社会生活の中で自己実現を図ることも人格的生存の重要な要素であるから,他者との関係における人格的同一性を保持することも,人格的生存に不可欠というべきである。したがって,他者から見た人格の同一性に関する利益も不法行為法上保護される人格的な利益になり得ると解される。」として、人格の同一性に関する利益も考えられるとしたうえで、   
「他者から見た人格の同一性に関する利益の内容、外縁は必ずしも明確ではなく、氏名や肖像を冒用されない権利・利益とは異なり、その性質上不法行為法上の利益として十分に強固なものとはいえないから、他者から見た人格の同一性が偽られたからといって直ちに不法行為が成立すると解すべきではなく、なりすましの意図・動機、なりすましの方法・態様、なりすまされた者がなりすましによって受ける不利益の有無・程度等を総合考慮して、その人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものかどうかを判断して、当該行為が違法性を有するか否かを決すべきである。」としました。   
 そして、本件では、なりすましが正当な意図,動機によるものとは認められないけれども、「なりすましの方法,態様についてみると、本件サイトの利用者は、アカウント名・プロフィール画像を自由に変更することができることからすると、社会一般に通用し、通常は身分変動のない限り変更されることなく生涯個人を特定・識別し、個人の人格を象徴する氏名の場合とは異なり、利用者とアカウント名・プロフィール画像との結び付きないしアカウント名・プロフィール画像が具体的な利用者を象徴する度合いは、必ずしも強いとはいえない」、「原告が被告によるなりすましによって受けた不利益についても、「原告の名誉権及び肖像権の侵害による不利益については別に不法行為上の保護を受ける」し、その余の不利益についても、なりすましは本件サイト内の投稿にとどまること、投稿の直後から他の本件サイト利用者により、投稿が原告本人以外の者によるものである可能性が指摘されていたことが認められること、なりすましは短期間(約1か月余り)であったこと、などの事実を総合考慮すれば、被告のなりすまし行為(名誉権侵害行為,肖像権侵害行為は除く)による原告の人格的な利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものとまでは認められない、として、本件のなりすまし自体は違法とまではいえないという判断をしました。

 つまり、名誉権肖像権の侵害は認め、プライバシー権アイデンティティ権の侵害は認めなかったということになります。ただ、後者の2権利についても、なりすましの行為態様によっては、侵害が認められる場合もあることを示しているので、参考になろうかと思います。

«「経口補水液」の広告・表示に関する消費者庁要請