2018年5月16日 (水)

「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(国土交通省)

 先日(5月11日)、国土交通省が、 マンションの大規模修繕工事に関する実態調査の結果を公表しています。 

 → 「マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施」(国土交通省)

 → 「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」 (PDF・27頁になります。)

102_2

 マンション大規模修繕工事の発注等において、施工会社の選定に際して、発注者であるマンション管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されているため、国土交通省が、マンション管理組合等の大規模修繕工事の発注等の適正な実施の参考となるよう、大規模修繕工事の金額、工事内訳及びその設計コンサルタント業務の実施内容に関する実態調査を実施したものです。 これにより、工事を発注しようとするマンション管理組合が、設計コンサルタントや施工会社から提出される見積り内容と本調査結果とを比較して事前に検討することにより、適正な工事の見積りかどうか検討する際の指標となる、とのことですね。 

 大規模修繕工事だけではなく、単発の上下水道関係の修繕工事や電力供給契約などで、通常より割高の料金を取られたり、全く効果のないような無意味な工事をさせられるなど、素人集団であるマンション管理組合から、区分所有者たちがせっかく貯めてきた大事な積立金を悪徳業者が巻き上げるような事例も聴きます。

103
      ※画像は2枚とも、「マンションの大規模修繕工事に関する実態調査について(概要)(PDF)」より

 なお、国土交通省は、利益相反の例として、設計コンサルタントが、自分にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、マンション管理組合に経済的な損失を及ぼす事態、というのをあげています。

 この調査は、直近3年間に行われた大規模修繕工事944事例について、大規模修繕工事の「工事内訳」「工事金額」、設計コンサルタント業務の「業務内訳」「業務量」の分布を統計的に整理したもので、事前に検討した方がよい主なポイントとして、   

  • 工事内訳に過剰な工事項目・仕様の設定等がないか。
  •    
  • 戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高となっていないか。
  •    
  • 設計コンサルタントの業務量(人・時間)が著しく低く抑えられていないか。特に業務量のウェートの多くを占める工事監理の業務量が低すぎないか。

があげられています。

 また、昨年(平成29年)1月、国土交通省は、こういった大規模修繕工事等に関して、下記の相談窓口を紹介する通知を出していますので、ご参考まで。

 ・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター

 ・(公財)マンション管理センター

 私が実際に相談を受けた例としては、業者側の人間がマンションの一室を購入し、マンション管理組合の役員となって牛耳り、自分側の業者に割高で工事をさせる、というのがありました。区分所有者ら全体がきちんマンション管理組合を運営しておればいいのですが、マンション管理組合や自治会の活動は面倒だとか、無関心だとかの人が多いため、少数の役員にコントロールされてしまうのですね。しかも、中古のマンションは価格も安いですので、利得を見込める大規模修繕工事のためにマンションの一室を購入するくらいは簡単です。実際にこうなってしまうと、一部の区分所有者だけで闘うことは非常に困難になりますので、区分所有者みんなが意識を高くしないとマンション全体の価値が下がるということになります。 

 ところで、こういった工事などで、後で、悪徳業者に騙されたというような場合に、消費者契約法や特定商取引法などによる取消はできないのか、という問題があるのですが、長くなってしまいましたので、それは、後日に。

2018年5月15日 (火)

海のものとも山のものとも・・・

 本日、消費者庁は、農事組合法人石垣島海のもの山のもの生産組合(沖縄県石垣市)に対して、同組合が販売する食品「ヒバーチ」の表示について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)であるとして、措置命令を行っています。消費者庁としては、本年度2件目の措置命令になります。

  → 消費者庁公表資料 (PDF)   

100_3

                       (消費者庁公表資料より)

 「ヒバーチ」というのは、私は知りませんでしたが、石垣島などで「島胡椒」といわれるスパイスのようですね。

 この「ヒバーチ」の原料は植物の実であるところ、この生産組合は自らのwebサイトに、「石垣島海のもの山のものは、青果や商品を通じて石垣島の食材や食文化を全国へお届けしています。」などと表示したり、商品の包装に、「甘い香りの島胡椒 石垣島ヒバーチ」などと記載することにより、あたかも、対象商品の原材料は、それぞれ、石垣島産のものであるかのように示す表示をしていました。しかし、実際には、原材料の大部分が外国産のものであったということです。

2018年5月11日 (金)

メールによる取締役会招集通知の到達

 東京地判平成29年4月13日(金融・商事判例1535号56頁)および東京高判平成29年11月15日(同号63頁)は、ロッテホールディングス(以下、「ロッテH」)の取締役会決議無効確認等請求事件の一審、二審の判決(以下、併せて「本件判決」)です。

 この事案は、社会的にも注目を受け、報道もされていますが、被告(被控訴人)ロッテHの代表取締役だった原告(控訴人)が、ロッテHの取締役会においてなされた「原告を代表取締役から解職する旨の決議」は、取締役会についての原告に対する適法な招集通知が行われなかった瑕疵により無効であると主張して、この取締役会決議が無効であることの確認を求めた裁判です。

 結果は一審、二審とも、取締役会決議は有効として、原告の請求を認めませんでした。

 ただ、本件判決では、この取締役会の招集手続において、原告に対する招集通知を欠いており、法令違反だとしました。それにもかかわらず、裁判所が決議を無効としなかったのは、仮に原告が取締役会に出席しても、決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるから、通知を欠いたという法令違反は、決議の効力に影響がなく、決議は有効であるとしたものです(これは従来の最高裁の考え方です。)。

 ここでは、取締役会招集通知が行われたか否か、という争点について、見ていきたいと思います。

 本件判決の認定事実によれば、ロッテHは、この招集通知を、原告を含む各取締役に対し、メール送信によって行いました。しかし、原告は、自らパソコンを操作することはなく、原告のロッテH社内におけるパソコンは、秘書室において管理されており、原告に割り当てられていたメールアドレス宛てに電子メールが送信されることはなく、秘書室も、この原告アドレスの受信状況を確認することはなかったようです。そして、通知メール送信当時の原告が、このアドレスに取締役会の招集通知が送信されることを予期し得たというべき事情はうかがわれない、と認定されています。また、このメールの送信日時は、平成27年7月27日午後11時23分で、取締役会開会は翌日28日午前9時30分と、その間隔が非常に短く、かつ、深夜のメール送信でした。

 このような通知メールの送信が適法な招集通知といえるか、というのが問題となります。(なお、法律的には、招集通知は「意思表示」か否か、という面倒な論点もありますが、ここでは踏み込みません。)

 意思表示の到達について、最高裁は、「意思表示の到達とは、相手方が意思表示を了知し得べき客観的状態を生じたことを意味すると解されている。すなわち、意思表示が相手方にとって了知可能な状態におかれたこと、換言すれば意思表示が相手方のいわゆる支配圏内におかれたことをいうと解される」としています(最判平成10年6月11日、最判昭和43年12月17日、最判昭和36年4月20日)。なので、実際に手紙に書かれている内容を読んでいなくても、自宅のポストに郵便が投函された時点で、意思表示が到達した、と考えるわけです。これらの判決の事案は、もちろん電子メールによる意思表示ではありません。

100

 本件一審判決は、上記の最高裁判決を踏襲したうえで、上記のようなメール送信の実態では、「本件メールが上記アドレスに係るメールサーバに記録されたことをもって、原告の了知可能な状態に置かれた(支配圏内に置かれた)ということはできない。その他、本件メールの内容が原告の了知可能な状態に置かれたものと評価すべき事実は見当たらない。」としました。さらに、上記のように、通知メール(深夜)から取締役会開会(翌朝)までの「間隔が非常に短く、かつ、深夜のメール送信であって、メールを確認して当該会議への対応を検討するための時間的余裕がほとんどないこと等をも考慮すると、実質的に見ても、原告に対し本件取締役会の招集通知がされたと評価することは困難である。」として、原告に対する取締役会招集通知がされたということはできず、招集手続には法令違反の瑕疵があるとしたものです。

 もし、この招集通知メールが、原告が普段使っているアドレス宛に送られたというような場合であれば、原告がメールを見ていなくても、原告のメールサーバーに記録された時点で通知が到達した、と見られることになると思いますが、それにしても、ちょっと開催までの間隔は短すぎますので、その点は、通知の到達の問題と別に検討されなければならないと思います。

【参 考】

経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(平成29年6月改訂)3頁~

2018年5月 1日 (火)

web雑誌「消費者情報」5月号(関西消費者協会)

 私が昨年まで理事を務めていた(公財)関西消費者協会のweb雑誌「消費者情報」5月号がサイトにアップされました。

 今回の特集は「兵庫県発!サイバー犯罪をめぐる防犯の取り組み」です。

 → 2018年5月号 消費者情報No.484

 川添圭弁護士仮想通貨について書かれてますね。
 もちろん、無料ですので、興味のある方は是非ご覧下さい。以下、目次からは各記事のPDFファイルにリンクしています。

○ 特集 兵庫県発!サイバー犯罪をめぐる防犯の取り組み

 特集 兵庫県発!サイバー犯罪をめぐる防犯の取り組み
  兵庫県警察本部 生活安全部 サイバー犯罪対策課 サイバー犯罪防犯センター

 「サイバー犯罪・ネットトラブル対策研修」を受講して
  消費生活アドバイザー 萬代 淳子

 サイバー被害を防げ!啓発講座に奔走する警察官の心意気
  兵庫県警察本部 生活安全部 サイバー犯罪対策課   
    サイバー犯罪防犯センター 兵庫県警部補 本田 英理さん

○コンシューマー・トピック

 仮想通貨の法規制と問題点
  弁護士 川添 圭

○職業としての消費生活相談員

 バランスのとれた相談対応のすすめ—消費者に寄り添った支援を行うために—
  東京経済大学現代法学部教授 弁護士 村 千鶴子

○がんばれ!消費者委員会

 消費者基本計画工程表の改正素案に対する意見について
  消費者委員会事務局

○団体訴権への展開

 京都消費者契約ネットワークの活動報告―2件のお試し価格訴訟の展開―
  NPO法人 京都消費者契約ネットワーク(KCCN)
   弁護士 森貞涼介

○若者が考える消費者問題

 なぜ消費者問題に関心を持ち どのように捉えているのか【前篇】
  神戸大学大学院生 NPO法人C・キッズ・ネットワーク
   佐々野 将太

○ネット漂流

 子どもに影響するフェイスブックの個人情報流用事件
  NIT情報技術推進ネットワーク株式会社 篠原 嘉一

○Infomatiom

 インフォメーション

2018年4月26日 (木)

「無印良品」のソファカバーの不当表示

 昨日(4/25)、消費者庁は、「無印良品」を運営する株式会社良品計画(東京都豊島区)に対し、同社が販売するソファカバーに係る表示について、不当表示(優良誤認表示)であるとして、措置命令を行っています。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 これは、例えば、「綿ポリエステル変り織ハイバックリクライニングソファ・1シーター用カバー/ベージュ」との商品名及び「ハイバック1S用」との規格名のソファカバーについて、商品タグに「太さの違う糸を使ってざっくりと織り上げた生地に、撥水加工を施しました。」と表示するなど、あたかも、対象商品は撥水加工が施されているものであるかのように示す表示をしていたが、各商品は撥水加工がされていなかったというものです。

100

 景品表示法課徴金制度が導入された平成28年4月以前からの不当表示が今年1月まで続けられていて、全国の無印良品で販売された多種類のソファカバーですので、相当の売り上げがあったと思われます。後日出されると思われる課徴金納付命令課徴金も高額になるかもしれませんね。

2018年4月20日 (金)

ようやく大阪府も措置命令(景品表示法)

 昨日(4/19)、大阪府は、イオンリテール株式会社(千葉市美浜区)に対し、景品表示法に基づき(有利誤認表示)、措置命令を行いました。

  → 大阪府報道発表資料

100

 大阪府景品表示法違反事件について措置命令を出すのは、景品表示法の改正による権限強化ということで都道府県が措置命令を出すことができるようになった平成26年12月以降、初めてとなります。つまり、約3年半の間、せっかくの権限を使っていなかったことになります。実は東京都も先月に初めて措置命令を出しているという状況で、愛知県はまだゼロです。都道府県が出した措置命令は今回が13件目だと思いますが、一番多いのは静岡県の3件。改正前は、都道府県は、不当表示に対して、「指示」というのを出すことができ、その頃は年間数十件の指示が出されていたので、なんのために都道府県の権限強化が行われたのか分かりませんですね。

 本件は、「イオン」の新聞折り込みチラシの不当表示で、「ミツカン追いがつおつゆ2倍1L」を「8/20限り」、「朝9時からのタイムサービス」、「昼12時までのご奉仕品」、「お1人さま1点限り」で、「本体価格198円」の価格で販売されると表示して、あたかも同日の時間限定で、他の営業日に比して安い「198円」で販売されるかのような表示をしていたが、実際には、8月5日から同程度の価格で販売されており、チラシに表示していたような特定日の特定時間帯に限って特別に廉価で販売されていた事実は無かったというものです。このような表示を少なくとも24回にわたって、イオン吹田店など関西の店舗で行っていたことが、不当表示(有利誤認表示)とされました。

2018年4月11日 (水)

ロースクール平成30年度講義の開始

 先日(4/9)から、神戸大学ロースクール(法科大学院)の今年度の「消費者法」の講義が始まりました。

 神戸大学での「消費者法」は、平成26年度から担当していますので、今年度で5年目を迎えます。

 10年以上前から担当してきた京都産業大学ロースクールの「情報法」講義は秋学期、こちらの神戸大学「消費者法」は春学期と半期ずつ担当してきたのですが、京産大のほうは、既に募集停止となり、学生が残り少なくなりましたので、昨年度をもって私の講義は終了しました。ですので、今年度からは、神戸大学で春学期のみの講義担当ということになります。

 先日、行きますと、場所が昨年までの大きな教室から、普通の教室のロの字型の机の配置になっていて、来てくれていた学生さんでほぼ満員となっていました。昨年までより、距離が近くお話ができるように思います。

 指定の教科書は「基本講義 消費者法(第3版)」 (中田邦博・鹿野菜穂子 編著 日本評論社)です。

100

 昨年はこれの第2版を使っていたのですが、3月に第3版が出ました。最近の消費者契約法や民法(債権法)の改正なども織り込まれていて、使いやすそうですね。

2018年4月 5日 (木)

日本相撲協会と公益財団法人

 日本相撲協会の舞鶴巡業において、土俵上で挨拶中の舞鶴市長が突然倒れたため(クモ膜下出血だったようですが)、観客の中の女性が土俵上に上がり心臓マッサージを始めたところ、協会側から女性は土俵を降りるようにアナウンスされたということが報道されています。

100

 その後、協会側から、人命上の問題であり、アナウンスは不適当であったというような発表がなされたようですが、以前から、日本相撲協会は土俵上は女人禁制という伝統があるということで、女性の立ち入りを禁止してきました。森山真弓氏が官房長官時代に内閣総理大臣杯を、太田房江氏が大阪府知事時代に府知事賞を、それぞれ優勝力士に手渡すため土俵に上がることを申し入れた際にも、協会は「伝統」を理由にいずれの時も拒否をしています。

 ここのところ日本相撲協会は、モンゴル出身力士同士の暴行事件やそれに関連した貴乃花親方の処分、立行司式守伊之助のセクハラ事件など、いろいろとあまりよろしくない話題が続いているところのこの事件ですね。

 まず、土俵の女人禁制というのが「伝統」であるのか、ですが、少なくとも明治時代までは女性の相撲興行があったわけですので(もっと後までかな?)、当然ながら女性も土俵にあがっていたものです。その意味では、夫婦同姓の「伝統」と変わらないような感じですね。

 日本相撲協会は単なる民間のスポーツ団体ではなく、2014年に文部科学省により「公益財団法人」の認定を受けている団体です。そもそも、税制上の優遇措置を受けることのできる公益財団法人が営利の競技を主催すること自体が本来はおかしいと思うのですが、それは置くとしても、土俵上の女人禁制というようなルールを維持し続けるというのは、公益的活動を行うための公益財団法人の趣旨からも疑問ではないかと思います。

 実は、日本相撲協会が財団法人から公益財団法人に移行する前に、当ブログでは、関連の記事を書いています。

 → 「日本相撲協会と公益法人制度改革」 (2011/2/6)

 これは、当時、八百長問題で、大阪場所が中止になるというような大騒動の時に書いたものです。この翌年に現在の公益財団法人の認定を受けるのですが、この記事を読み返してみて、当時から何の反省もされず来たのかな、と思ってしまいました。

 文部科学省は今回厳格な対応を行うべきかと考えます。

2018年3月29日 (木)

『職務発明の実務 Q&A』(髙橋淳・松田誠司 編著)

 本日もDMM.comなどの液晶ディスプレーの優良誤認表示に対する措置命令消費者庁からでているのですが、このところ景品表示法の話題ばかり続きましたので、特許関係の書籍のご紹介を。

 このほど出版された『職務発明の実務 Q&A』(髙橋淳・松田誠司 編著 頸草書房 発行)を、編著者である松田誠司弁護士よりご恵贈いただきました。松田弁護士は、弁理士登録もされておりますし、最近まで、任期付公務員として、特許庁において、職務発明の平成27年改正作業にも関与され、他にも、職務発明に関する書籍を出されております。もともとは、大阪弁護士会所属の方ですが、今は、大阪を離れて東京で活躍されています。

100

 発明を保護するための法律である特許法では、原則として、発明を行った人(自然人)が特許を受ける権利を持ちます。しかし、それでは、会社における研究開発の場合、その研究開発担当社員個人が特許を受ける権利を持つとなると、おかしなことにもなりますので、会社と社員との間での利益を調整する必要があります。この調整を行う制度が「職務発明」制度です。

 青色発光ダイオードの発明に関して、会社と後にノーベル賞を受賞することになる中村修二氏との間の訴訟では、2004年1月、東京地裁において、200億円という高額の対価の請求が認容され(裁判所が認定したのは何と604億円だったのですが、訴訟の請求額は200億円だったため認容はこの範囲)、社会的にも大きなニュースとなりました。実は、その翌年1月、控訴審である東京高裁(知的財産高裁が発足する直前でした)において、訴訟の対象の特許のみならず中村氏在職中の発明の特許全部の対価を6億円(遅延損害金除く)として会社が支払う、という和解が成立しました。この一審判決の額から大幅減額で和解という結果になった点は、いろいろと想像するところですね。

 いずれにせよ、この発光ダイオードの訴訟で一躍知られることとなった職務発明問題で、その後もいくつかの判決で高額の対価を認める判断が出ました。実は、その頃、私の事務所にも、そういう研究開発を行ってきた元メーカー社員の方が相談に来られたことがありました。ただ、その後の職務発明の対価についての考え方の変化もあり、いくつかのハードルがあったため、請求は諦められましたけども。

 このような経過を踏まえて、その後、職務発明制度は、平成16年、平成27年と改正が行われています。

 上記『職務発明の実務 Q&A』は、第1章で、こうした現在に至るまでの流れを概観したうえで、第2章で、実務的なQ&Aが記述されています。また、巻末資料として、職務発明規定例や同意書なども付けられており、企業の実務にも大変役立つものとなっていると思います。

2018年3月28日 (水)

ガンホーなどに対する課徴金納付命令(景表法)

 景品表示法関連のネタが続いていて恐縮なのですが、本日も、課徴金納付命令が2件、消費者庁から出されました。

 ひとつは、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(東京都千代田区)の人気オンラインゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)のガチャに係る表示(優良誤認表示)に関するもので、この件の昨年7月に出された措置命令の際には、当ブログでも記事にしていますので、興味のある方は参考にしてください。

 → 消費者庁公表資料(ガンホー課徴金納付命令) (PDF)

 → 「ガンホーとグリーに対する景表法の措置命令(消費者庁)」 (2017/7/19)

 課徴金額は、5020万円となっていますが、本件では、ガンホーが自主申告したものであるため、景品表示法9条により、2分の1の減額を受けた結果、この金額となっています。

100

 「パズドラ」と同時に措置命令の対象となった「ディズニーマジックキングダムズ」 有利誤認表示は今回は対象となっていませんね。また、ガンホーと同時に措置命令を受けたグリーに関しても今回は出ていません。   


 もうひとつは、これも措置命令の際には当ブログで取り上げました研修サービスの株式会日本教育クリエイト(東京都新宿区)の研修受講料についての二重価格表示有利誤認表示に関するものです。

 → 消費者庁公表資料(日本教育クリエイト課徴金納付命令) (PDF)

 → 「研修サービス等に関する有利誤認表示(二重価格表示事案)に対する措置命令など」
                            (2017/5/19)

 こちらの課徴金額は合計5105万円となっています。

«(続) 「eスポーツと景品表示法」(白石忠志東大教授)を読んで